むらむら

電人ザボーガーのむらむらのレビュー・感想・評価

電人ザボーガー(2010年製作の映画)
5.0
「キラーソファ」の後、「デッド寿司」的な作品を観たくなり、同じ井口昇監督のこの作品を鑑賞。

開始5分。電人ザボーガーを操る主人公・大門豊が登場した瞬間、悪の組織に言い放つ台詞でいきなりノックアウトされる自分がいた。

「俺は、秘密警察の大門豊だ!」

えーっ、秘密じゃねーのかよ! 大声で宣言してどうする!!

……と、この時点で、俺はこの映画の虜になってしまった。

主人公からしてコレなので、当然の如く、周りのキャラもブッ飛んでいる。

・大門に至近距離から銃弾をブチ込んで、「いやー、お前の反射神経を試してみたんだ!」とのたまう刑事たち

・戦闘そっちのけで大門を誘惑する敵の女幹部

・上空はるか彼方に浮かぶ悪の組織の基地を見て「あ、あれお前の親父が拷問されてね!?」って言うモブキャラ(千里眼かよ!)!

それに、悪の組織も警察も、やることなすことお互いに筒抜け。何か行動を起こすと、すぐ相手が駆けつけて乱闘が始まり、なんとなく有耶無耶になる。お前ら、トムとジェリーかよ! と昭和な俺は思ってしまった。

大門の命令を受けて動くロボット・ザボーガーもイイ。
普段はバイクとして大門に仕えているが、一度戦闘になると、人間型ロボット、ザボーガーとして、大門の命を受けて戦うのだ。

だが、この大門の命令が、かなりアバウトなのは俺的にポイント高かった。最初の方は流石に

「ザボーガー、パンチだ!」
「赤いところを狙え!」
「そこで、ブーメランカッターだ!」

と、ちゃんと命令を出している。だけれども、映画が進んで、ザボーガーがピンチになると。

「ザボーガー、痛みに耐えろ」
「負けるな」
「頑張れ!」

と、めっちゃ精神論になっていく。精神論って、ロボットに通用するんだっけ?

あと、この映画、やたら不必要に、暑苦しいオッサンの顔が、スクリーン狭しと並んでる。

普通だったら、主人公が喋ってるときに、主人公だけをカメラで抜くよね。

なのにこの作品では、ずらーっと顔の濃い面々が背景に並んでいて、「なるほどー」「えっ!?」「しまった」みたいな感情を、表情で伝えてくれるわけです。クドい、クドすぎる……俺は「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」という映画タイトルは、この「電人ザボーガー」のタイトルとして付けた方が良かったんじゃないかと思っている。

ところで、アイデアという言葉は、「愛」と「イデア(理想)」を足して出来ている(いま考えました)。

モノ作りに対する愛の力でもって、理想を実現するのが「アイデア」。

この映画、たぶん限られた予算の中で、相当、色々なものを詰め込んだんだと思う。それがチープに見えるかもしれないんだけど、この映画のエンドロールを観ると、原作TVシリーズへの「愛」が、この愛おしい作品を作り上げたんだということが理解できる。

なので、チープでトンデモな設定だからと馬鹿にせず、是非最後まで、この映画を観てください。

あとNetflixは、ルッソ兄弟に「タイラーレイク」作らせる予算を1%削って、井口昇に渡してあげれば、案外良い仕事をすると思うよ!
むらむら

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