ひろ

エレファントのひろのレビュー・感想・評価

エレファント(2003年製作の映画)
4.0
コロンバイン高校銃乱射事件を題材に、ガス・ヴァン・サント監督によって製作された2003年のアメリカ映画

第56回カンヌ国際映画祭において、パルム・ドールと監督賞を史上初めて同時受賞する快挙を成し遂げた!

1999年に起きたコロンバイン高校銃乱射事件。未だに当時のニュースを鮮明に思い出せるほど衝撃的な事件だった。自分とさほど年の変わらなかった少年たちがなぜ凶行に及んだのか?

この作品は、何人もの視点から時系列もバラバラに事件の日を描く群像劇になっている。被害者や加害者の視点や心情から、事件とその裏側に潜む問題が浮き彫りになっていく。

傷つきやすい繊細な10代の少年少女たち、それぞれが悩みや苛立ちなど、心に膿を溜めて生きている。誰もが加害者になりえたかもしれない危うい10代という年頃。そんな高校生たちをガス・ヴァン・サント監督が繊細な映像で映し出している。

「GERRY ジェリー」で試した長まわしのワンカットや、お得意の空の早送り、若者の描写など、監督が今まで培った経験の集大成となっている。クラシック音楽に合わせて表現される静かなる狂気は、恐ろしくも心に響く。

出演している生徒は、オーディションで選ばれた高校生たちで、本名で出演している。これにより高校生活がよりリアルに描かれているからこそ、事件の恐ろしさも伝わってくる。

衝撃的な事件をちゃんと受け止めて映像化した作品だと思うし、同じくこの事件を題材にしたマイケル・ムーア監督の「ボウリング・フォー・コロンバイン」も合わせて観れば、より深く考えさせられることだろう。
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