くわまんG

グラン・ブルー/オリジナル・バージョンのくわまんGのレビュー・感想・評価

4.5
モラトリアムの港湾を後にし、自分だけの帆を掲げ海原に乗り出す物語。

みどころ:
夢追い人の現実は不可視で不可侵
神秘的な海とマッチした主観演出
R.アークエットの愛が切ない

あらすじ:
伝説のフリーダイバー、ジャック・マイヨール。生涯の伴侶は海。彼は確かに人生を得た……。

初期リュック・ベッソンの傑作。鑑賞したのは完全版で、断然完全版推奨です。

やりたくて仕方ないことをやりきったその人生は、深海のような不可侵領域へ。もう誰も彼に干渉できない、誰も届かない。その歓びと寂しさ。

以下備忘録です。

富や地位を拠り所にする人は、地に足が着いている。社会を泳ぐのにこれほど役立つツールは無く、進行方向を決める必要も無く、己の居場所はランクが教えてくれる。判断基準は損得、得るのは利便と快適、失うのは思考。

夢や幻を拠り所にする人は、苛烈な現実と折り合いをつけるだけで難渋。それを生業にするならば、負うリスクは数倍増。嗜好品等への逃避は勿論、拠り所に殺されることも。しかし、何者も侵すことのできない、人生の歓びを知っている。

己の真価を求め続ける人生の果てには、成れの果てではない、希望に満ちた何かがある。一度切りの人生、夢と向き合うリスクを冒すのは、あるいは一度きりではないからなのかもしれない。