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エスパイのnoteのネタバレレビュー・内容・結末

エスパイ(1974年製作の映画)
3.2

このレビューはネタバレを含みます

世界平和会議に出席するために、ヨーロッパ横断鉄道に乗ったメンバーが狙撃され死亡。これに対し、エスパーによる世界的な警察組織エスパイの日本支部長の法条は、メンバーの田村、マリア、寺岡とともに、強い能力を持つレーサーの三木を加え、バルトニア首相の暗殺を阻むため、イスタンブールに飛ぶ…。

エスパー+スパイ=エスパイ!
「日本沈没」に続いて、小松左京の原作小説を東宝が映画化したSF作品であり、当時としては珍しい超能力アクション映画の佳作。
超能力を平和のために使用する「エスパイ」と、政治・謀略のために利用する「逆エスパイ」の対決を描く。
現在でいうところの厨二病精神たっぷりの話だが、製作された1974年という時代を考えると、超能力者映画の傑作「キャリー」よりも、フォースでお馴染みの「スターウォーズ」よりも前である。
当時、オカルト映画はあったが、超能力関連の映画は、まだ世界的にあまりない時代。
そう考えると、この発想は凄いことだ。

しかも、キャストも豪華で、藤岡弘、草刈正雄、加山雄三、若山富三郎、由美かおる、と誰もが主役を張れる面々であり、当時この映画がヒットしなかったのが不思議なくらいだ。
多分、あまりにも時代の先を行っていたせいだろう。
エスパイは今でいうと「X- MEN」のような組織であり、SF作品としてとても面白い題材なのだが、それをキチンと料理する土台と技術が邦画界に無かったのだろう。
今見ると、映画の出来は今ひとつであるのだが、時代のせいもあり、出演者が大真面目で迫真の演技を披露する。
そのため、まるで大人向け劇画の実写化のような味わいがあるのだ。
冒頭の狙撃シーンから「ゴルゴ13」のようである。

イスタンブールで敵の逆エスパイによってマリアを拉致されてしまい、田村は必死の捜索で発見し、なんとか超能力で救出。
逆エスパイに捉えられ、催淫剤を投薬されたマリアが、ランジェリー姿を恋人・田村の前にさらし、黒人を挑発して豊かな胸を露わにするシーンは強烈なインパクト!
やはり、お子様向けに作られた映画ではないのだ。

胸を見られて傷ついたマリアは逃走(笑)、敵の攻撃で超能力を失った田村は、敵のボスのウルロフに海に投げ込まれるが、味方の潜水艦に救出される。
スピーディーで都合の良い展開は007を意識したものか?

バルトニア首相の護衛に向かった一行は、超音波攻撃にさらされ、超能力が妨害されますが、三木の超能力で敵を粉砕。
三木は人を殺した罪悪感に苛まれる。

首相は暗殺されたと思いきや、実は首相は替玉で、平和会議は東京で開催されることとなり、一行は空路でパリから日本に向かう。
スパイというよりSPの活動に転換する。

空港で田村とマリアが再会。
「何かを滅茶苦茶にするのは一瞬で充分よ」とマリアがグラスを割る。
嫁入り前に胸を見られたのがショックだったのが、当時の貞操観念の高さを物語っていていじらしい。

空港でパイロットが敵のジュリエッタの催眠術にかかり、飛行中、墜落に直面する機体を、田村は立て直そうとするが、機体が反応しない。
メンバーのサラバッド師の念動力で機体が持ち上がり、危機を脱するが、高齢のサラバット師は力尽き、帰らぬ人となる。
自己犠牲に、首相もその死を悼む場面は物悲しい。

会議場で護衛に着いた三木は、幼馴染のジュリエッタに誘い出される。
田村は、必死で三木の後を追う愛犬を追いかけ救出に向かう。

超能力がまだ回復していないにも関わらず、生身の田村が強い。
さすが藤岡弘、仮面ライダーを彷彿とさせるアクションで魅せる。
だが、ジュリエッタに車に閉じ込められて、時限爆弾を仕掛けられる。
爆発まで10分もあるのはご愛嬌だ。

その頃、会議場は大地震でパニックになるが、それは敵の起こした幻覚だった。
なかなか大掛かりなセットの破壊である。

田村はマリアの危機を察知して、爆発寸前の車からテレポーテーションで会場に出現。
愛の力が新しい力を生んだのだ。
敵を粉砕し、本拠地のウルロフ邸に乗り込んだ田村たちは、ボスのウルロフと対決。
ウルロフもまたエスパーであり、ウルロフはエスパーを差別してきた人類への復讐の為、世界平和を阻止しようとしていた。
田村のピンチに今度はマリアの愛の力が発火能力(パイロキネシス)を生み、ウルロフは焔に包まれ、邸は燃え落ちるのだった…。

だが本作は単純な正義は勝つ式のヒーロー・アクションではない。
超能力を愛で成長する能力と定義するエスパイに対し、逆エスパイのボス・ウルロフは「人間は血と争いを好む生物」と主張。

ウルロフに幼少期の悲痛な体験があったことが語られるが、超能力者への差別と偏見の悲しみは、まるで「スキャナーズ」。
善玉にも超能力者としての苦悩があるはずだが、そこが描かれなかったのは残念。

愛こそ全てと語る昭和感覚が気恥ずかしいが、ポリティカル・アクションとして外国映画と比べても遜色ないスケール。
現在の邦画と比べると、これだけの製作費と出演者を揃えて作る映画が無くなっている。
誰かリブートしてほしい、劇画の味わいを持つカルトなSF作品である。
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