まぐ

ノルウェイの森のまぐのレビュー・感想・評価

ノルウェイの森(2010年製作の映画)
3.9
良くも悪くも、かなり不親切な映画だと思った。

例えばキャラクターが悲しいと言う感情を抱いたとき、普通の映画ならば表情、風景、演出などで何かしら悲しみという感情を表現するが、この映画ではそれがごく僅かしかない気がした。そのためキャラクターがいま何を考えているのかが常に分かりづらい。
あるいは結局主人公は直子が好きなのか緑が好きなのか、普通の映画ならばはっきりさせた上でのワタナベの葛藤を描くのだろうが、この映画に関してはどちらも正解で不正解なのだろう。

このように、映画的な面白さをいくつか捨てた挑戦が、個人的には見えた。

カメラワークも独特で、「普通だったら会話する2人を映すのに頑なに1人ずつ映す」など、「普通だったら」と思うことがなんどもあった。先輩とその彼女とワタナベの三人での食事シーンのカメラワークはセンスあるなぁ、と感心した。
照明も、風景は美しく魅せるが人に当てるとどこか生気を感じさせないような色で、全編通して幻想的で危うい雰囲気が漂っている。

自分は完全には登場人物たちの気持ちはわからなかったが、直子に対しての追う必要のない責任感や、緑と直子両方に対して抱く質の違う恋心、ワタナベが見捨ててくれないからこその直子の苦しみなどの、この映画の三角関係が織りなす人としての矛盾やジレンマには何となく自分にそう遠くないものを感じた。

難解すぎるくらい難解な映画で、自分も100理解できたわけではないが、いろんな面で新鮮な映画体験だった。
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