まぐ

サバイバルファミリーのまぐのネタバレレビュー・内容・結末

サバイバルファミリー(2017年製作の映画)
4.3

このレビューはネタバレを含みます

個人的に傑作だった。
とても聞き入れやすい「現代社会への警鐘」。

コメディというジャンルだが、この映画に関してはコメディである、ということ自体が一番重要な気がする。実際笑えることを第一に作られているというよりは、シリアスな話に無理なく入れ込める程度に笑いを入れ込むという印象。
しかしこれだけで深刻なテーマの作品でもぐっと間口が広がる。

テーマは人と人とのコミュニケーション。コミュニケーションであれば何でもいいということではなく、「裸のコミュニケーション」である。
最初のシーンでは家族が皆バラバラの方向を向いてコミュニケーションをとっている。
息子はヘッドホン越しに、娘はケータイ、父はテレビに向かって喋る。
さらに言えば息子は好きな人に真っ直ぐ思いを伝えられず、娘は偽りの自分で友達と接し、父親はプライドが邪魔して子供を素直に認められない。
しかし、旅の途中で家族は変わっていく。東名高速の家族とのコミュニケーションを皮切りに、素直に心を開くことの大切さを学んでいく。
特に父親の成長は感動的だった。最後まで父親としてのプライドが邪魔をして素直に謝ったり助けを求めたりできないが、最後はかつらというプライドを脱ぎすて、息子から貰った発煙筒を使い助かる。ハゲ散らかした頭で家族と大笑いしているシーンはぐっと来るものがある。

皆が同じようなことを考えスーパーの特定のものだけがなくなったり、その中でも穴を見つけて物資を得るシステムを自ら作り出したりと、電気がない世界の描写にも説得力があり、アイデアに富んでいる。

コメディで描きづらい人間の死に関する描写も最低限入っており、行き届いている。

演出も王道中の王道だが、その王道をとても丁寧に描いているのが良かった。
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