このレビューはネタバレを含みます
ユダヤ系ドイツ人ウォルタ-はナチス台頭と共に弁護士の職を剥奪され、遥かケニアの地に渡る。
海外への渡航禁止命令が下るぎりぎりでの決断であった。
夫婦と幼い娘一人との生活。
家族であっても三人それぞれの気持ちの違い、心の有り様を描いている。
イギリス支配の地で敵国ドイツ人のそのまた敵のユダヤ人である複雑な立場。
祖国はあってないようなもの。
そんな環境でも
娘のレギ-ナは馴染むのが早い。
現地の子とは遊んじゃいけないって言われても何のその。
子供同士に垣根はない。
妻も苦しみながらも徐々に地に足をつけていく。
ちょっと奥さん、それはダメ!と言いたくなったりもするけど、生きるには仕方ないのかもしれない。
反面、ウォルタ-の場合はキャリアがあるばかりに苦労するんだな。
そして夫婦のすれ違い。
「白人の女は何で胸を隠すんだ?」
とレギ-ナの友だちの男の子。
ん?確かに!
隠すから恥ずかしい。
恥ずかしいから
いやらしいのかも💦
死生観も、死期が近付いたらそっと家族の元を離れ、一人で先祖に守られて旅立つ…亡き骸は?
それはご想像にお任せします。
まあ、これもありかな。
多くを学んでアフリカに溶け込んでいく家族。
むき出しの地面、生い茂る草木。画面から伝わるアフリカは美しい。
空気まで感じられる。
広い地球、人々は様々だけど別れの悲しさだけは人間なら皆同じ。
戦争という悲しい現実をはらみ、心に傷を持ってはいても、それを前面には出さず、淡々と日常を描いた作品。
とても良かった。