LalaーMukuーMerry

チャイナ・シンドロームのLalaーMukuーMerryのレビュー・感想・評価

チャイナ・シンドローム(1979年製作の映画)
4.3
こんな映画があることを、今まで知らずにいたなんて! 原発の危険性を告発するアメリカのサスペンスドラマ。1979年といえば、世界で最初の原発事故であるスリーマイル島事故の年、チェルノブイリ事故(1986)のずっと前だ。Wikipediaによれば、映画公開の12日後にスリーマイル島事故が起きたらしい。何という先見性。
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私たちは2011.3.11の福島第一原発の事故によって、原発やその中の原子炉の構造がどうなっているか、メルトダウン(炉心溶融)が起こるとどれほど危険かということを、頭の中にたたきこまれたから、この作品に描かれたような事態(地震によって設備に影響が出て、炉心内の水位が異常に低下する)が、とても恐ろしいことだと分かる。しかしこの作品をリアルタイムで見た観客は、そこまで切実に危機感を持つことができたのだろうか?  
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おそらく何も知らない観客に、恐ろしさをイメージしてもらうために使われたのが「チャイナ・シンドローム」という言葉。メルトダウンで制御不能になった核物質の塊は巨大な熱を発生して回りのものをすべて溶かしながら地球の中心に沈んでいき、やがて地球の反対側の中国にまで到達するのだという。(おいおい、そりゃちょっとオーバーすぎる。沈んでいくかもしれないが、地球の中心にまで行くことはないし、まして重力に逆らって反対側の地表に到達するわけがない。それにカリフォルニアの裏側は中国じゃないだろ!)
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TVの女性ニュースキャスター(=ジェーン・フォンダ)が原発の取材に行って、ガラスで仕切られた見学ブースから中央制御室の説明を受けている最中に大きな地震に見舞われた。すぐに揺れは収まったものの、制御室の人たちの様子がとても変だ。何も問題はなかったと説明係の人は言ったが、取材陣のTVカメラは中の様子を内緒で克明に撮影していた。
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スクープとして放送しようとするが待ったがかかる。もっと裏をとる必要がある。原子力の専門家に映像を見てもらい、ニュース制作のクルーにも何が起こっていたか、一歩間違えばどんな事態に発展したかが分かってくる。
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制御室の主任技師(=ジャック・レモン)は、地震の時の異常事態が気になっていた。なぜあんなことが起こってしまったのだろう? 独自で調査を進めていくうちに設備に重大な欠陥が潜んでいることに気づく。しかし会社上層部は損失発生を恐れてこのまま運転再開することを命令する。良心に従い、彼はインタビューを受けいれてTVで話をしようとするのだが・・・
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派手なシーンは殆どないですが、とても面白くてよくできた作品でした。アメリカでも当時、核廃棄物の処理問題は棚上げされたまま原発建設が進められていた。原発推進派は原発は安全だと言い、隠蔽体質であること。原発反対運動も当時既にあったが、推進派はお金の力で様々な妨害を陰でやっていたようだ。今の日本と同じような構図が、当時のアメリカでもしっかり見て取れるのが興味深かったです。