赤

七年目の浮気の赤のレビュー・感想・評価

七年目の浮気(1955年製作の映画)
3.8
2018年DVD鑑賞22本目

ジョージ・アクセルロッドのブロードウェイ舞台を映画化、監督は巨匠ビリー・ワイルダー。
主演マリリン・モンローのスカートがめくれ上がるシーンはあまりにも有名である。

マンハッタン島に住む人々は暑くなると妻や子供は涼しいところへ行き男は島へ残る、というボイスオーバーから始まる。そして舞台となる500年後のNY、主人公リチャード・シャーマンは妻と子供をバカンスへ送り一人アパートに残る。
そこで上の階の部屋主の留守期間中、間借りすることとなる金髪美女が現れる。

ヘイズ・オフィスの検閲目下の中、不貞行為を題材に扱うということがまず当時では考えられない程の挑戦的題材である。ビリー・ワイルダーはこの検閲に対して徹底的に戦い続け、見事表現の勝利を獲得している。逆に検閲があったからこそ、抜け道を掻い潜ってできた表現に趣を感じる。まさにハリウッド映画が時代と呼応し、共に歩んできた証であると思うと実に感慨深い。

想像力が豊かというより妄想が激しい主人公。妄想のシーンがしばしばあるのだがこれが結構狂気を感じた。コメディタッチの作品とは思えないレベルでノワール調であり、こういう部分でもワイルダーの作家性が垣間見える。

最初からエンジン全開の「お熱いのがお好き」などを最近見てしまったので正直序盤は間延び感があり、これは面白くなってくるのだろうかと少々心配したが徐々に加速していき、序盤に張った伏線が上手く効いてきてやはり面白い。
 
この作品、元が舞台ということもありほぼ密室劇に近く、基本的に主人公一人のシーンでも一人で台詞を語り続ける。台詞やシーン毎に切り取ると十分に面白い部分がいくつもあるのはもちろんのことだが、全体として凡庸な展開で完全な面白さには欠けるように感じてしまった。

ただ、面白さの一定水準は十二分にクリアしており、あくまでもビリーワイルダー作品の中での位置づけとして見るとである。
ラストシーンの斬れ味は今作も顕在であり、全てを掻っ攫って最後はオールオーケーにしてしまう手腕は見事である。

兎にも角にもモンローの魅力を堪能できるだけでも十分に見る価値のある作品なのは確かである。
ハリウッド映画の名シーンの一つとして、またはモンローの人生を大きく変えることとなったシーンとしても、例のスカートのシーンを断片的でなくストーリーを通して見ることには意義がある。
マリリン・モンローはこの先もずっと私達を魅了し、映画の中で輝き続けるだろう。
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