赤

ラストナイト・イン・ソーホーの赤のレビュー・感想・評価

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60年代ロンドンの光と影、交錯する現実と幻影、街に呑まれる夢追い人達。
過去と現在で地続きの搾取と支配、全ての時代を生きる女性へ捧げる自由と尊厳の力強いメッセージ。
天才エドガー・ライトの緻密な脚本、ハイパーな演出とホラー映画への敬愛を堪能する至上の映画の旅。

"過去の理想化の危険性"を描くに辺り、過去の名作や60's音楽を作劇上必要な要素として引用し、新しい意味付けと現代的アップデートを施した上で更に"過去への憧憬を胸に生きることもできる"というメッセージに繋ぐ。
この圧倒的志の高さとストーリーテリング力に感服です。

『反撥』における"男性性"への反撥と幻影の拘束、『赤い影』の男女間の絶対的性差と女性の根源的強さ。
両作を基軸としヒッチコックやアルジェントまで、心理的恐怖演出や画面構築に散りばめられた膨大な引用&オマージュ。
エドガー・ライトの世界最高峰のサンプリング術は本作も健在。

"こうするしか""ここまでしないと"守れない尊厳への抑圧に対して、今日的な一つの誠実な回答をジャンル映画という枠組み内で語り切る見事な手腕。
Promising Young Womanにも通じる全方位的射程の広さとメッセージ性の強さ、エドガー・ライトが込めた想いに落涙しました。
赤