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ブレス しあわせの呼吸の赤のレビュー・感想・評価

ブレス しあわせの呼吸(2017年製作の映画)
4.2
2018年劇場鑑賞79本目

「ブリジット・ジョーンズの日記」等のヒット作を世に送り出した名プロデューサー、ジョナサン・カヴェンディッシュの両親の姿を描く実話に基づいた作品。
ロードオブザリングやアベンジャーズ等に出演の俳優アンディ・サーキスの初監督作品。

ロビンとダイアナが結婚をし、子供ももうすぐ生まれるという幸せの絶頂の時、ロビンは28歳という若さにしてポリオを患い余命数ヶ月と宣告をされる。首から下が麻痺して人工呼吸器が無ければ2分ももたないという境遇に陥る。
絶望の淵に立たされたロビンを連れて、ダイアナは医師の反対を押し切り病院を出る。ダイアナの自宅介護での献身的な支えや、友人の発明した人工呼吸器付き車椅子は外での活動をも可能にし、次第にロビンは生きる希望を取り戻していく。

実話ベース、重い題材を扱っているがとにかく明るく描かれている。しかし、脚色を加えて明るくした訳ではなく、あくまでも限りなく実話に忠実に作り上げた結果、必然的に明るく温かみのあるストーリーテリングとなっている。ロビンやダイアナ、彼らを支えた周りの人々が持っていた圧倒的なポジティブさが推進力となっているのが凄い。危険な行動や一歩間違えば不謹慎な言動も彼らは日々を彩るユーモアへと変えてしまうのだ。

主人公ロビンを演じるアンドリュー・ガーフィールドの緻密な演技が輝いていた。首から下が動かせないため、顔だけで演技をしなければならないのだが表情一つで感情が非常に上手く伝わってくる。また、プロデューサーであるジョナサンの歯の形を取り、義歯を付けて撮影に臨んだとのこと。この徹底的な役作りのリサーチが功を奏して、顔を見ただけで我々の感情を揺さぶるエモーショナルな演技が生まれている。

ロビンとダイアナは普通の人生を歩むことはできなかったが、二人は喜びに満ちた生活を送り、楽しく幸せに暮らした。息子でありプロデューサーであるジョナサンがまさに描きたかったものが丁寧に映画化されている。見事である。
最後は泣いてしまったが、それ以外は笑顔で見ていた記憶しかない。
観た者へストレートに生きる喜びを分け与えてくれる優しい作品であった。

公開館数が少なすぎるのが非常に残念である。もっと多くの人に観られてもいい作品であるのは間違いない。
公開が終了してしまう前にぜひ劇場で鑑賞していただきたい。
赤