赤

Arc アークの赤のレビュー・感想・評価

Arc アーク(2021年製作の映画)
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生きることの対極に死があるのではく、生きることの中に死がある。
老齢と死を克服した時に人は何を想うか、始まりと終わりのある人生という円弧上に浮かび上がる今この瞬間を生きることの素晴らしさ。
何の為に生きるかを観客に問う、今見るべき石川慶監督の新たな傑作。

人類は進化したのか退化したのか。
不老不死を手にする者しない者、持つ者・持たざる者の分断は現実世界にも通じる。
他者・世界と触れることで生まれる多様性とアイデンティティ。誰に所有されることも誰を所有することもない、罠にかからないで自由に生きることへのメッセージを受け取った。

原作の巧みな脚色、それを具現化する撮影や美術、編集により余白を残す意図した省略。
ボディワークスの見事な映像化やモノクロで映し出される幻想的な小豆島も原作のイメージと合致し説得力を増す。
日本映画離れしたSF作品でありながら日本映画らしい余韻が残る、私達の世界と地続きの物語。
赤