Melko

13FのMelkoのネタバレレビュー・内容・結末

13F(1999年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

「頼みがある。この世界にいる俺たちをそっとしといてくれ。」

アマプラのおすすめリストに偶然出て来た作品。あらすじ読んで気になったのでレンタル。まぁ大方の想像通り、地味……

静かに淡々と進み、ストーリー的な起伏が乏しく、絵とビジュアルがすごく地味で、印象に残る音楽もない。が、分かりやすく端的なセリフとシンプルな構成により、物語が把握し易い「マトリックス」って感じ。

しかもコレがマトリックスのなんと半年も前に公開されたことを思うと、私がハッキリと覚えてる23年前のあの時代は、まさに「仮想現実」映画の戦乱前夜だったか。
VRやARなんか目じゃない世界。
しかも、マトリックスともまたちょっと違った世界
1999年の時を生きる人が、1937年(の仮想空間)に生きる自分とビジュアルが似た他人の意識を借り(一時的に乗っ取り)その世界を体験する。
だが実は1999年の世界も仮想空間。真実の世界は、2024年(来年…!)……なのか?
もはや真実の世界とはどこにあるのか。
私たちは誰なのか?
意識を乗っ取られた人間は、乗っ取られている間の記憶がない。ということは、夜/朝 寝ている数時間の間に、誰かが私たちの意識を乗っ取り、行動してるかもしれない…?
酔った後記憶がなかったり、寝て起きた後疲れてたり知らない場所にいたり、それには理由がある…??

なーんてことはこの作品では一切語られない。全てはその後私たちがアレコレ談義することで交わすことのできる見解と想像。

仮想空間の冒険/ミステリーのアイコン的作品である「マトリックス」とは大きく異なり、コチラはカッコいいファッションも音楽もアクションも、何もない。
ただ、本家と同じくらい生い立ちに関する説明のない主人公の、表情で魅せる地味且つ細かい演技が見もの。終盤、黒幕に意識を乗っ取られた際の表情の変化なんか特に絶妙。
この俳優さん体型と髪型で全然印象が違うのだけど、この作品での通常時の状態が実写版バズ・ライトイヤーみたいで、、なんか妙に気になった(台無し)
あとはやはり不気味な存在感あるキャラを演じさせたらピカイチのヴィンセント・ドノフリオ。序盤から「何かやらかすぞ」感満載。そして期待を裏切らない凶暴さと暴走列車具合。

マトリックスよりもいくらか劣るかもしれないが、「この世の果て」=その先の世界は建設中 の描写がある意味リアルで、気づいてしまった主人公の静かな絶望に共感した。
まぁ冷静に考えるとどうもツッコミどころや行動の矛盾点が割とあるし、尺が短い分説明や描写が足らなさ過ぎたりして物足りない感もある。
でも、マトリックスB面て感じで、なんか印象に残る作品ではあった。
Melko

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