運動靴と赤い金魚
1997年 イラン マジッド・マジディ監督
妹が履く靴を、兄が不注意で失くしてしまう。
親にバレると叱られる。
兄は、女子の授業を受けに行く妹に自分の運動靴を貸して
その後に受ける自分の授業の時間までに靴を回収するという作戦で
なんとか父親の次の給料日まで誤魔化そうとするが…
うだつの上がらなそうな口ばっかりのパッとしない父親。
その父親を支える腰の具合が悪い母親。
借家住まいの家族。
広場の水場で洗い物をする生活の風景。
迷路のような高い壁に囲まれた街の風景。
仕事を探しに彷徨う高級住宅地との対比。
そして
ハンデがあるが、幸せそうな家族の風景との対比。
映像の全てが計算され、動きや会話も無駄がなく引き締まり、物語は次第に熱量を帯びてクライマックスに向かって進んでいく。
そして
見ている此方側の期待を軽々と飛び越えて物語は終わりを迎える。
暖かい期待と、ほろ苦い余韻と共に。
アジアの、イランという国の、人々の生活を垣間見ながら、そこを縫うように進む子供の物語を眺める楽しさ。
見ている我々は
最後にはあの金魚になって
徒労を味わう彼を労い
彼の努力を褒めてあげたくなる。
よく頑張ったね、お兄ちゃん。
もうひとりで背負い込まなくてもいいんだよ。
ほら、もうすぐお父さんが
お土産を持って帰ってくるよ。
とても可愛らしく
心地よい映画。