亘

運動靴と赤い金魚の亘のレビュー・感想・評価

運動靴と赤い金魚(1997年製作の映画)
3.9
【純粋な少年】
小学生アリはおつかいの帰りに妹ザラの靴をなくしてしまう。しかし家庭が貧しくて靴を買い替えることができず、2人は靴を交換して学校に行く生活を始める。ある日学校対抗のマラソン大会の商品が運動靴であることを知り大会出場を決める。

少年アリの純粋さを感じる温かい作品。実際のマラソン大会は終盤しかないのだけれども、それまでのやりとりでもアリの純粋さが感じられる。話の流れもストレートだし、マラソンの結末も何となく予想できてしまう。それでも集中してみてしまうくらい純粋さに惹かれる。

アリは両親と妹と暮らす小学生。学校では優等生だった。ある日修理された妹の靴をなくしてしまう。家は貧しく父親は厳しいため靴をなくしたことを言い出せない。そこでのアリとザラの秘密の筆談はほほえましい。

そこからアリとザラの靴交換生活が始まる。まずはザラが学校へ行き走って帰宅。家の前で待ち受けていたアリと靴を入れ替えて走って学校に行くのだ。2人はいつでも必死で、ザラが用水路に靴を落としたりアリが遅刻したりするハプニングがありながらも健気。アリが遅刻のときには、優等生ということで先生から見逃されるけど、それもまじめで純粋な証拠だろう。それに先生に必死で遅刻の説明をする姿も可愛らしい。一方ザラはほかの生徒の靴が気になってしまってかわいい靴の子の後を追う。別にかわいい子と仲良くなったりするわけでもないけど、靴が気になってしまう姿はザラの健気さが表れている。

ある日父親はより稼げる仕事のためにアリと共に高級住宅街に向かう。庭仕事で収入を得ようとするのだ。父親から声をかけたにもかかわらず、インターホンでの声掛けでは委縮してしまう。そこでアリが才能を見せてうまく庭仕事を得るのだ。この邸宅の少年とアリとのやり取りもほほえましいけども、このシーンでは父親の優しさも見える。素直にアリの才能を褒めてあげるし、「これで何でも買える」とうれしそうな顔を見せる。

終盤ついにマラソン大会が告知される。そこでアリは3等の商品が運動靴であることを知り参加を決める。ここでポイントになるのが3等商品であるということ。アリは純粋だから3位を狙いに行くのだ。転倒しながらも必死で走り続けてデッドヒートを繰り広げる。何とかゴール直前で調整しようとするがうまくできずに優勝してしまう。ただそこからの泣きそうな表情での写真撮影とインタビューはアリの純粋さを感じる。
それでもラストシーンでは父親が秘密で靴を買いに行く。その後のアリたちの反応は見られずに終わるけどもアリとザラの笑顔が浮かぶラストだった。

印象に残ったシーン:アリが先生に遅刻の説明をするシーン。アリがデッドヒートをするシーン。
亘