Melko

レクイエム・フォー・ドリームのMelkoのレビュー・感想・評価

4.0
”You make me feel like a person. Like I'm me... and I'm beautiful.(あなたといると、私らしくいられる。私は美しいって。)

”It's a reason to lose weight, to fit in the red dress. It's a reason to smile. It makes tomorrow all right. (生きがいができたの。痩せて、赤いドレスを着る。笑顔でいられる。希望が持てるようになった)”

薬物ダメ、絶対
を子供に教えるなら、これを見せろ!と有名らしい一本
心して見たので、想像を上回らないとは言え、やはりガッツリ精神削られました。直接的に痛々しい場面もちょこっとだけ出てきたり、サラッとヌードも映るので、お子様には見せられないけど、これを見たらそりゃあ誰でも、怪しい薬やダイエット薬飲んだり、薬物を体に打ったりなんて、したくなくなると思う。
それぐらい、主要キャラ4人の演技がすごい。精神的にも身体的にもやられまくる4人の演技が恐ろしく凄い。なんか、演技で殴られた気分。演者本人の気持ちは分からないけど、きっと皆、覚悟を持って出演に臨んだんだと思えてならない。

意外にも1時間40分という短いランタイム。
その中で、幸せで満ち足りた時間は30分。残りの時間は、4人がゆっくりと確実に人生を下り落ちていく様子が描かれる。
そしてそれが、めちゃくちゃ特殊な事情な訳ではなく、やろうと思えば私も思い当たる動機で、やれそうな行動なので、それがゾワっと寒気を誘う。

だけど、薬物ダメ絶対は表のメッセージで、究極のテーマとしては、「自己肯定感と幸福感の醸成」なのかなと。
何をしている時、自分がどうある時が幸せなのか。そしてそれをするために近道を考えることも大事だけど、果たしてそれは、近道をして大丈夫なことなのか。
人から必要とされていないと寂しさを感じたり、なりたい物になるのに何もかも足りてないと感じてしまう時、人はついつい近道をしようとしてしまう…
その結果、自分自身も、大切な存在も失ってしまう。元の人生に戻れなくなってしまう。
食べないダイエットは絶対ダメだし、働かずにお金は稼げない。
薬をやることで身体がボロボロになります、なだけではなく、何か色々と考えを巡らせてしまう。

映像の合間にリズムよく挟まる吸引・服薬カットや、耳に残るテーマ曲の旋律が印象的。

メインの4人の中では、女性2人が体を張った演技で深い爪痕を残していた。特にやはりハリーの母サラを演じたエレン・バースティンが凄まじい。ダイエットピルを止めろと諭すハリーに想いを吐露するシーンの切なさったら。そして哀愁と恐怖のラスト30分。女優としてのイメージを犠牲にすることを厭わず演じた姿に拍手。
絶望的な状況に自ら身を投じるマリオン役のジェニファー・コネリーもなかなか見応えがあった。彼女の様々な感情を映したカメラワークとヘアメイクも秀逸だと思う。

好きな映画ではないが、見たことを忘れない強烈さに高得点。
Melko

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