秋日和

我が至上の愛 〜アストレとセラドン〜の秋日和のレビュー・感想・評価

3.5
5世紀のフランスに生きた人々は、当然のことながら現代フランス語で書かれた文を読むことができない。ロケットペンダントを首からぶら提げている筈もないし、ましてその中に恋人が映っているカラー写真が収められているなんてあり得ない。更にはいくら美青年だからと言って、髭の跡が目に沁みる(!)女装姿で周りの人間の目を欺ける訳もない。
うわ、これはロメール結構振り切ってるな、と思わせながらも楽しく魅せる、当時83歳の監督。その凄さと言ったら、「このバカバカしさ、映画なら許されるよね?」と暢気に陽光を浴びながら演出しているんじゃないかと思うくらい。
草の上でゴロンと寝転がったり、虫が画面を横切ったり、絶えず鳥のさえずりが聞こえてきたり……この、あまりにも心地の良い光景の前にすると「時代考証」なんてどうでもよくなってしまう。そんなことよりも、男女が川の近くを歩いたときに吹いた二人の衣服をはためかせて木々を揺らした、あの強い風を楽しむことの方がよっぽど重要なんだと思った。
草の上で昼食……は食べないけれど、ロメールを見てちょっとルノワールに想いを馳せてみる。そんな贅沢が、もしかしたらこの映画には許されているんじゃないだろうか。
秋日和

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