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ジャンヌ・ダルクのSUIのネタバレレビュー・内容・結末

ジャンヌ・ダルク(1999年製作の映画)
3.0

このレビューはネタバレを含みます

このジャンヌダルクには奥ゆかしさや謙虚さもなければ、冷静さも聡明さも見られない。
ただ我の強い、情緒が不安定な少女だ。

彼女が戦に参加しても、これといった戦略があるわけでもなく兵士のモチベーションを上げるだけ。しかも兵の統制はとれていないし、指揮官なのか戦士なのか判然とせず戦場を叫びながらうろうろしているだけ。それでも大勝利をもたらす。
戦いの後は戦死者の山(惨劇)を目の当たりにして「こんなはずではなかった」と愕然としたにもかかわらず、すぐに「平和は槍の先で得るものだ」といけしゃあしゃあとのたまう。更には王の「今後は外交での解決に力を注ぐ」という方針に反発して食ってかかる。
そうなるともうただの好戦的なキチガイにしか見えない。
と、自分が感じたジャンヌ・ダルク像は、物語の中でもそのまま言及され、弾劾されていく。
それを狙っての演出だったら大したものだ。

ラストでの告解でジャンヌは「私は利己的で高慢で頑固に、復讐のために戦った」と告白する。それは冒頭のイングランド兵に凌辱され殺された姉の姿が重なる。本当に私怨のために戦っていたのだ。

それがリュックベッソンが見せたかったジャンヌダルク像なのだろうか?

正直自分は彼女のことはほとんど知らないし、この辺の歴史も明るくない。けど、それまで自分が持っていたジャンヌ・ダルク像とは著しく乖離している。

彼女の幼少期から、神の啓示を受け百年戦争で活躍し、異端審問で断罪されて火刑に処されるまで。
上映時間は2時間40分と長いけど、さすがにこれ一本で彼女の人生を描ききるのは無理があったのだろう。
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