1981年公開
「蒲田行進曲」「火宅の人」「人生劇場」の深作欣二監督作品
(個人的に深作欣二監督は五社英雄監督の次に女性を妖艶に撮る監督だと思っている)
原作は山田風太郎の伝奇小説
1960年代に大阪新聞に連載された「おぼろ忍法帖」が元となった
「おぼろ忍法帖」シリーズは
その雄大な構想と奇抜な展開で人気を博し
映画で大ヒットした他にも演劇、アニメ、マンガ、ゲームになり
現在でも「刀剣乱舞」に村正が擬人化されている
深作欣二監督は自身の監督作品の中でもこの「魔界転生」が一番好きな作品と言っている
映画の題名「魔界転生」はシリーズの中で出てくる秘術の名称。
耽美で妖艶、残酷で残忍、呪術と怨念
ジャパニーズ・オカルト・ホラー炸裂の世界観(〃∀〃)ｷｬ
映画の中で佳那晃子演じる細川ガラシャの濃いキャラは、映画化にあたり深作欣二監督が作り出した役で、完成後、原作者の山田風太郎も大変気に入ったキャラクターとなった
この佳那晃子は五社英雄監督の作品にも多数出演してる女優だけあって、とにかく妖艶！
悪魔に魂を売った怪しの怨霊チームの中でも沢田研二や若山富三郎といった濃い俳優と並んでも紅一点迫力の女の怨念で魔界転生する、匂い立つ色気を振りまく妖怪を怪演している。
禊
一剱萬生
一刀萬殺
魔界転生ハ
真界天生ナリ
神武参釼王太志命剱言
四代将軍、徳川家綱の時代
島原の乱で惨死した天草四郎率いる
3万5千のキリシタン
その怨念を一身に受けて晒し首になっても魂を乗り移らせてこの世に転生した
天草四郎が、
細川ガラシャ、
宮本武蔵、
宝蔵院胤舜、
柳生但馬守など
この世に未練と怨みを残して死んだ者を魔界転生させて徳川幕府を倒し、日本を火の海にして灰にしてやると、百姓を率いて江戸に向かう。
細川ガラシャは夫である細川忠興への怨念から徳川将軍家綱を「夫の身代わり」として籠絡して何週間も大奥の寝所に籠らせて将軍職を忘れさせ中枢から幕府を混乱させる
将軍家武道指南役の柳生但馬守は
将軍が怪しの者に篭絡されたことを知り
妖刀村正を持って登城するが途中で病に倒れ、死んだところを天草四郎に魔界転生させられてしまう。
この映画は最近めっきり数が減った、日本時代劇の豪華さと面白さがギュッと詰まっている。
日本時代劇を撮る一流の監督と
実際に時代劇でずっと柳生十兵衛を演じていた千葉真一が十兵衛を演じ
大河ドラマで大役を演じる若山富三郎が十兵衛の父、柳生但馬守を演じている
そして晩年の宮本武蔵を五社英雄監督と深作欣二監督作品の常連の緒形拳が演じている
もうそれだけで十分大河ドラマ級の重さがあって見応えがある
個人的に史実として誉高い細川ガラシャ夫人を真逆の恨み辛みドロドロの怨霊に描いた、佳那晃子演じる細川ガラシャ夫人ホントに好き。
特に最後、燃え盛る江戸城の天守閣に将軍家綱を夫の「忠興様」と呼びながら道連れにするシーンは圧巻！(家綱立つ瀬が無いね、ご愁傷さま)
妖刀村正を持った柳生十兵衛しか勝たん、映画と言ってしまったら終わりだが
宮本武蔵との浜辺の決闘シーンは見ものだし、さらに柳生十兵衛が妖怪になった父の柳生但馬守と炎の中で決闘するシーンは、殺陣の美しさが際立つ、若山富三郎と千葉真一の殺陣がカッコイイ。
沢田研二が32歳の時の作品
劇中に真田広之とのキスシーンがあったのも当時の腐女子の心を鷲掴みにしたことだろう。
柳生但馬守を演じてた若山富三郎は、松田優作の遺作「ブラック・レイン」でヤクザの大親分の役を演じてた私の大好きなおじ様俳優
昭和の色が濃い古い映画だが今見ても見応えがあった、むしろ当時より今見た方が作品の良さが分かった様に思う。
ジュリー演じる天草四郎が
「人間がいる限り私はまた戻ってくる」
と言って終わるラストは次作を期待させる終わり方だった
この作品の後に
2003年に窪塚洋介の天草四郎で撮影された「魔界転生」は様々な意味で物議をかもした。
まず映画の撮影が真夏だったために
当時飛ぶ鳥を落とす勢いの人気俳優だった窪塚洋介に衣装さんが気を使って
薄い布で暑さで苦しくならない軽く作った衣装がヒラヒラして安っぽくて重みのない「軽い天草四郎」になった結果…
そのヒラヒラの軽さはとんねるずの大人気番組でパロディにされて
おどろおどろしく空中から登場した天草四郎を発見した人達に
「…で？っていう…」(何しに来たの？)と苦笑されるパロディになった、むしろそのパロディの方が映画より有名になったんじゃないかと思う。
鳴り物入りの作品だったのに窪塚洋介の無駄使いに終わった様に思う
この窪塚洋介以後
「魔界転生」は撮影されていない。
122分の大作だが長さを感じない日本の黒歴史を魑魅魍魎と描いた傑作と思える作品。
以前から思っている事だが
上質なホラー映画には生首とおっぱいの比率が絶妙なバランスで成立していると思うのは…私だけかしら？
