ミッキン

十二人の怒れる男のミッキンのレビュー・感想・評価

十二人の怒れる男(1957年製作の映画)
5.0
大学に入ってすぐ。
仲間内で「1番泣ける映画」の話になった。
そこで初めて知ったのが『十二人の怒れる男』。現在はカメラマンとして第一線で活躍しているぶっさんのオススメだった。
(ちなみに自分はフェリーニの『道』と答えた記憶あり)

普段は人の薦める映画なぞ観たりしないが、何故か気になって大学の図書館でレーザーディスクを借りて観た。
人目も憚るずにラストは号泣したのを今でも忘れない。
あの時の感性を確かめるべく30年振りに鑑賞してみることに。

もちろんラストは覚えている。しかしヘンリーフォンダが最初は「有罪では無いかもしれない」というただの疑問だったことを改めて知り驚かされた。
12人のそれぞれの個性がハッキリと描かれていて、台詞にも無駄がない。心情描写も絶妙である。
同調圧力で支配される前半。空調の壊れた蒸し暑い部屋の中でイライラが募る面々。
ヘンリーフォンダの問い掛けに対し、少しづつ疑問を抱く者が増え、やがては同数に。
ブレイクタイムで陪審員長が高校のフットボールコーチを勤めていて、同じような土砂降りの中、試合をひっくり返した経験を話す。
やがて動き出す扇風機。ここが物語の転機だと思う。
スポーツの試合もそうだが、絶望的なビハインドからの奇跡の逆転劇は心を揺さぶられるものがある。
最後の一人が涙ながらに無罪と繰り返した時、30年前と同じ涙が自分の目に浮かんだ。