けんたろう

道のけんたろうのレビュー・感想・評価

(1954年製作の映画)
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舞い降りた天使のおはなし。


「Life is a tragedy when seen in close-up, but a comedy in long-shot.」
– Charlie Chaplin

動きからして既に喜劇な白痴女の、その表情に湛うるとても名状しがたき悲喜交々。彼女の感情がしみじみ伝う。
存在そのものがユーモアと化した身軽い愉快な道化師の悲哀。彼女とは又違うコメディなれども決して野暮ったくはなく、孤独が笑みを浮かべてじわりじわりと胸に染む。
冗談の通じぬ不器用極まりない剛腕な権力者。誰からも好かれぬその傲慢さから、気が付けば独りぽつちであった哀れな男。本作、常ならば只の悪役たる彼にさえも寄り添う。なんと優しいドラマだろうか。

一旦はロングショットで捉えたかと思いきや、そののちは極々クローズアップで撮影された、純粋なる石粒達のコメディ。
皆んな何か誰かの役に立つ。映画、至極人間なり。