あんがすざろっく

耳をすませばのあんがすざろっくのレビュー・感想・評価

耳をすませば(1995年製作の映画)
4.5
レビュー330本目。
今回は「330(みみを)」
ってことで。



お前さぁ 
コンクリートロードは止めた方がいいと思うぜ


スタジオジブリが描く、ひたむきな青春恋愛映画。

もともとは柊あおいさんの小説が原作なので、本作が原作ファンの方にどう受け入れられたのかは定かではありませんが(僕も未読ですが)、世間的には「耳をすませば」は本作のイメージが強いですよね。
実写版が公開された時も、アニメ版である本作とよく比較されていた訳ですからね。





開幕と同時に流れてくるオリビア・ニュートン・ジョンの声。
夜の街並みを上空から見下ろす。
衒いもなく目の前に広がるタイトル。
徐々に映像は地上へと場面を変えていく。
駅に停まる電車、行き交う人、車。
コンビニで買い物を終えた夏服の少女が、街の喧騒から外れた団地へ帰っていく。

もうこのオープニングで、毎回ゾクゾクっとするんです。
描かれている風景は、どこからどう見ても日本のはずなのに、田舎道でもないのに、なんでこんなに「take me home country road」がピタリと収まってしまうのか。
一気に映画の中に吸い込まれてしまいます。




「今日は何だかいいコトありそう!」

主人公は中学3年生の月島雫。
本を読むのが大好きで、頭の中はドキドキするような出会いと、乙女な空想でいっぱい。
受験真っ只中にあるはずなのに、行きたい高校がある訳でもないし、何かしたいことがある訳でもない。

夏休み、親友の夕子に頼まれた「カントリーロード」のオリジナルの和訳を携え、学校へ向かうが、思わぬところで見知らぬ男子にその和訳を読まれてしまう。
彼は何故か雫の名前を知っていた。

知らない人に読まれるだけでも恥ずかしいのに、その男子は遠慮も無しに和訳のセンスにいちゃもんをつける。
初対面の女の子に、なんて失礼な‼️

「ヤな奴❗️😠ヤな奴‼️😡ヤな奴‼️‼️😤」


↑見た人絶対みんな一度は真似したはずですよね😆

洞窟の中で宝物を見つけたのに、心ない一言で生き埋めになった気分。

その後も何かと雫と遭遇する男子。
さて、どうしてでしょう。

その男子の正体を知った雫は、再び洞窟の生き埋めに。
空が落ちてきたみたい。
 

雫と夕子の関係が、「ちびまる子ちゃん」のまるちゃんとタマちゃんみたいでいいですね。
聖司君もいいけど、杉村も愚直でいいと思います。


俺、さっきの歌も好きだけど、コンクリートロードも結構好きだぞ

聖司君、言ってることが違うぞ🤣

でも実は僕も、あのコンクリートロードの歌詞が好き😁ちゃんと歌詞がメロディに合ってるじゃん‼️
カントリーロードの和訳も良かったけど、あの自虐的な歌詞が雫の本質を捉えていた気がします🤭



雫役には本名陽子さん。
これがデビュー作だったのかな。

そして聖司君役が、高橋一生さん‼️
何気にキャリアが長いんですよね。
ビックリしました。

お母さん役の室井滋さんが型にはまらない感じでピッタリ。

お父さん役は立花隆さん。
「となりのトトロ」のお父さん役は糸井重里さんでしたが、声優さんでない人の起用がジブリは多いですよね。
決して上手ではないけど、味があります。

「他の人と違う道を進むのは、それなりにしんどいぞ。
上手くいかなくても、誰のせいにもできないからね。」

これは雫の将来の夢への挑戦、現実と向き合うこと、成長の物語でもあるんですね。


「いざ、お供仕らん!ラピスラズリの鉱脈を探す旅へ!」
雫とファンタジーの世界の架け橋になるのが、猫の置物、バロン男爵(声をあてた露口茂さんが渋い‼️)。
雫が偶然見つけたアトリエ、地球屋の主人(小林桂樹さん、こちらも素晴らしい)が大事にしていた人形です。
このバロンに強く惹かれた雫は、バロンを主人公に物語を書く決心をします。

アイツがやるなら、私もやってみる。


自分が何をしたいのか、何になりたいのか。
漠然とした将来の壁にぶち当たり、その中で一つの目標を見つけた雫。
受験勉強そっちのけで、寝る間も惜しんで物語の執筆に没頭します。

しかし、書けば書く程、自分の力の無さ、書きたいことも上手に表現できない自分の不甲斐なさに押し潰されそうになります。
そんな自分とは対照的に、夢に向かってどんどん進んでいくアイツ。

置いていかれちゃう。遠くなっていっちゃう。

それでも物語を書き上げた雫は、ただ好きなだけでは夢は叶わないのだと、身をもって思い知ります。
物語の最初の読者になった地球屋の主人から、彼の思い出と、雫の物語の不思議な繋がりを聞いた雫。
そして、主人からの強い励ましが、雫を成長させます。


純粋なイメージがある作品だけど、実は現実の厳しさもさりげなく描いています。
そう、だからただのファンタジーではないんです。


ジブリ作品の監督と聞くと、まず宮崎駿監督と高畑勲監督が思い浮かびますが、本作の監督は、それまでジブリ作品で作画を担当してきた近藤喜文監督。
本作が長編デビューとなりました。
その瑞々しい感性、人物描写と背景のバランス。
スタジオジブリに新しい爽やかな風が吹き込んだように思われました。

公開から3年後、近藤監督はお亡くなりになっています。
「耳をすませば」が唯一の監督作品になりました。

だからという訳でもないけれど、本作の存在感は、ジブリ作品の中でも際立っています。
どちらかと言うと、遠い異国の物語や少し昔の日本が舞台となる作品が多い中、本作は自分達が一番近づきやすくて、親近感が持てる、手の届くような距離の物語だったと思うのです。


背景や美術が素晴らしいのは言わずもがなですが、凄いのはそれが突出せず、物語の中にしっかり溶け込んでいること。
雫の家の美術が見事。
玄関から台所、部屋の広さやダイニングに雑然と積まれた雑誌、電気の明るさまで生活感が溢れてます。
舞台の一つとなる地球屋から図書館へ抜ける近道の階段は、まるで地上を空から見下ろすような感覚。
夜の帰り道に遠くに見えるターミナル駅の明かりも素晴らしいです。

舞台となった街にはモデルがあって、20年くらい前に友達と聖地巡礼しました。
あの曲がりくねった坂道、神社、地球屋のあるロータリーなど、本当に色んなシーンが思い出されます。
ラストの高台のモデルになった場所には、「耳すまノート」みたいなのが置かれて、沢山の人が書き込みされてました。

今は駅前も開発されたし、高層マンションも沢山建ったでしょうから、あの景色はもう見れないかも知れませんけど、本作を見る度に、また行きたくなってしまいますね。
もしかしたら、あの高台も立ち入りできなくなってるかな…。



エンドロールもとても好きです。
高台の一本道をフィックスで映し出してるんだけど、そこを右から左へ、はたまた左から右へと、沢山の人が歩いていく。
朝のジョギング、通学の時間、ベビーカーを押したお母さんの散歩、走っていくパトカーや宅配便の車、下校の時間、通勤を終えて帰宅するサラリーマン。
時間に沿って、空の色も変わっていきます。
ずっと目が離せないんです。
そして、あの二人の未来が、何となく垣間見えます。


ジブリの青春物語と言えば「海がきこえる」も好きですが(これもいずれレビューをあげたい)、少し淡白な雰囲気の「海〜」に対し、本作は純情恋愛どストレート。
少女漫画のような展開なのに、何回見ても、いつも感動してしまいます。

「お荷物だけなんてイヤ‼️」
「オレ、お前のあの歌歌いながら頑張るからな」

きゃあ😆‼️スッテキ〜😚🥰☺️
あんがすざろっく

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