バナバナ

明日への遺言のバナバナのレビュー・感想・評価

明日への遺言(2007年製作の映画)
3.5
東海軍が正式な軍事裁判を経ずに、B29の搭乗員を処刑したことを裁く内容の裁判だったのだが、アメリカ人弁護士の弁護の仕方がすごい。

そもそも米軍の無差別爆撃が国際法に違反した違法行為であった、というところに重点を置いて弁護するんである(日本軍だって、先に重慶などに無差別爆撃をしてるんだけど)。
まだ戦争が終わったばかりなのに、アメリカ人兵士を殺した日本人の弁護の為に、自国の違法性を声高に叫んで、そこまで突き詰めて弁護してくれた人がいたんだ、というところに驚いた。

で、映画の出来とは関係ないんだけど、なんで処刑の仕方が斬首だったんだろう…、というところが気になった。
映画によると、斬首をしたのは東海軍だけでなく、他の方面軍でもたくさん行われたようだ。
当時の刀って、刀鍛冶が一本づつ丹精込めて鋼を叩いた…というような代物と違って、工場のオートメーションで造った刀を支給された、なまくら刀だった筈だ。
おまけに処刑する人も、江戸時代は罪人が苦しまないように、首切り役人は剣の腕が一番立つ人が選ばれていたが、居合い道の有段者が当時の軍に必ず配属されていた訳などないので、素人がやって一刀両断なんか無理はず。
映画の中でも、何回も切り付けて、「苦しみにもんどりうってる囚人と目が合って怖くなった…」みたいな台詞が出てきてましたが。

絨毯爆撃で家族を焼き殺された市民が、竹槍で刺し殺した、というのなら心情的に分かるのだが、近代国家の軍隊で、まだ銃殺にするのでもなく、なぜ斬首だったんだろう?
どうも、「武士道」や「帝国軍人らしさ」を追究しようとして、とんでもない方向に行っちゃっただけ、というように思えるのだが。
『海と毒薬』の元となった“九州大学生体解剖事件”といい、日本人のその場の雰囲気に流されて行動してしまうところって、かなり怖いと思った。

事実に則ったという映画のラストを見ると、岡田中将の部下を思う真情は、アメリカ人裁判官たちにもよく伝わったのだろう。
が、映画自体は回想などもなく、ほとんど裁判シーンばかりだったので、私にはちと辛かった。
バナバナ

バナバナ