広島カップ

豚と軍艦の広島カップのレビュー・感想・評価

豚と軍艦(1961年製作の映画)
4.0
声を出して笑えたりはしない重喜劇と呼ばれる今村昌平作品群の中でワハハと笑えてしまった数少ない作品で、それは桑田佳祐...いや長門裕之の素晴らしい演技に拠る所が大きい。当時の日本映画界に何かしらの賞があったら是非主演男優賞をあげたかったと思う。
本人はコメディテイストを意識してはいないのかもしれないが、落ち着きがなく元気な兄ちゃんの中に哀愁も漂わせてくる辺りに可笑しさを醸して素晴らしい演技。
早口で桑田のボーカリゼーションのように聞き取りにくいセリフ廻しが似ているのも御愛嬌。

横須賀のチンピラヤクザの一番下っ端の彼は先輩ヤクザにこき使われる日々だが明るくアクティブで前向き。そんな所に惚れたのか彼女(吉村実子)も呆れつつもなかなか離れる事が出来ない。そんな二人の恋物語も応援したくなるがそこは流石に今村で通り一遍のラブストーリーにはなかなかさせない。

横須賀といえば米軍の軍港の街で米兵がウロチョロする戦後風景を引き摺っている街。そんな米軍にくっ付いて生きざるを得ない人々に関しての描写はそこも流石に今村で抜かりがなく、寧ろこちらの方が主なテーマなのでしょう。

アクティブな主人公に合わせたかのような映像もダイナミックで楽しめる。豚の大群の暴走を頑張って撮った夜のドブ板通りでの大騒動も今村のシニカルな一面が窺われて楽しい。
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