唯

エム・バタフライの唯のレビュー・感想・評価

エム・バタフライ(1993年製作の映画)
3.4
自国のアイデンティティに誇りを持ち、国に従順であることを貫くためなら何だってやってのけるソン。
中国人としての歴史的背景があるのはわかるけれど、西洋にだってもちろん歴史があるわけで。
互いに違うという前提に立ちながら、それでも理解し合う方向に努められれば良いのに、だけれど人は、寄り添う前に分断する。

人間関係には、必ず上と下、主と従がある。
ルネとソンの関係もまた、蝶々夫人的な恋愛に美しさを見出し自己もそれに浸りたいというルネの独りよがりなものである。
ルネは、東洋の女・ソンを下に見ては、自らの所有物として扱い、快楽を満たそうとする。

男は女に対して従順であることを求めるだとか、東洋人にとって西洋人は皆敵とする思想だとか、一人の個人としての前に属性ありきで相手を見てしまうのは愚かなことではないか(そこを超越して、ただただ自身の心にのみ従って築かれる関係は本物なのだろうが)。
相手にどういう役割を担って欲しいのかをすぐ人は考えてしまうし、見たいものだけを見るものである。
親密な関係であったのに男に気付かなかったなんて信じられないことだが、それもまた、東洋の女とは慎ましくあって欲しいという欲求が信じ込ませたのだろうね。

蝶々夫人としての生き方に異常な程心酔していたのか、冷静になぞらえての末路なのかは不明だが、元は演劇作品らしい終わり方で好き。

ジョンローンの色気と美しさがこれまた異常。
唯