もるがな

タクシードライバーのもるがなのレビュー・感想・評価

タクシードライバー(1976年製作の映画)
4.6
不平不満だらけの世の中に、どうしようもない底辺の男。古い映画だが、描かれている社会の閉塞感はまるで現代のよう。社会の汚さを許容できず、孤独に苛まれる時、人は容易く主人公トラヴィスのような狂人へと変わる。彼は狂っているが、彼の抱える疎外感や孤独感、女に対する執着や政治への憤りなどは誰しもが身に覚えがあるだろう。初デートでキレさせたシーンは100%主人公が悪いと分かっていても、見てる世界の狭さやコミュニケーション力の乏しさ、自分と他人の区別がついていないことを思うとあまり笑えないのだ。程度の差はあれど、ああいう部分は誰にだってある。

トラヴィスを演じるのは若き日のデニーロだが、この社会に対する馴染めなさの演技が素晴らしい。トラヴィスの思う正義と社会の位相差が見てるこちらにも伝わってくる。まさに怪演。

結局は満たされない自身の鬱憤ばらしなのだが、世間の見る目は違う。主人公も世界も狂気を抱えたまま物語は進んでいく。そのズレにゾッとしながらもトラヴィスへの共感は捨て切れない。人がある日モヒカンになったら要注意だ。トラヴィスはそこらじゅうにいる。
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