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暗殺のオペラのKANAのレビュー・感想・評価

暗殺のオペラ(1970年製作の映画)
3.7

ベルナルド・ベルトルッチの長編第4作。

かつて反ファシズムを掲げ暗殺された父親の死の真相を探るため、息子が父の殺された北イタリアの小さな町を訪れる、というところから始まり、ミステリータッチ。

やがて判明する真相にも驚くけど、それ以上に惹きつけられるのは圧巻の映像美!
撮影はこれ以降ベルトリッチ作品に欠かせないパートナーとなるヴィットリオ・ストラーロ。

日没直後の深いブルーの光景、薄暗さの中で官能的にさえ感じる光と陰のコントラスト、優美に生けられた花々の鮮やかな色彩、遠近法やシンメトリーの構図…これらの詩的かつ絵画的な美しさにひたすらうっとり。
さらに、主人公が父親と瓜二つの設定で2役していることも利用して、滑らかな移動で現実と過去をリンクさせたシーンなんかは幻想的で、ある種ファンタジー。

このタラという架空の地の夏の風景は白のFIATもよく馴染み、牧歌的でノスタルジック。
そこに計算され尽くしたカメラワークやオペラ『リゴレット』で洗練さを加えた絶妙な融合バランス。

終盤父親の死の真相が判明した時、ファシズムへのレジスタンスという現実の生々しさに引き戻される。
いや、頭はそうだけど感覚的にはすんなり戻らず、戯曲の中にいる感じかな…笑

今まで観たベルトルッチ作品はどこかしらゴダール・コンプレックスが感じられたけど、本作はいい意味でそれがほぼなかった(と思う)。
ストラーロの腕がますます冴えたという『暗殺の森』も観てみたい!
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