しゅん

爛(ただれ)のしゅんのレビュー・感想・評価

爛(ただれ)(1962年製作の映画)
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徳田秋聲好きなので観ないわけにはいかない。

振られた元夫への情念の叫びが苗字の連呼となって表れるところ、つまり「浅井〜!浅井ィィィ〜!」で思わず笑ってしまった。田宮二郎演じる浅井という男は名前を持たぬ空虚であり、空虚に頼らなければ生きていけないという女たちの状況がすでにツラいという話なのだ。

映画冒頭のショット、ブラウン管に映るボクシングがすでに死闘を予感させるが、直後のマージャン(上から映すカメラとテロップ挿入がかっこよすぎ)の弛緩したゲーム性が戦いの充実を無化させる。無下に終わるのがわかりきっているのに続いていく爛れた戦い。
ラストに少しずつ電気を消していって闇を導く若尾文子がひたすらに眩しい。
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