和桜

皆殺しの天使の和桜のレビュー・感想・評価

皆殺しの天使(1962年製作の映画)
4.0
宴の後、屋敷の外へ出ることが出来ないと気づくブルジョア達。屋敷に細工はなく、誰かに閉じ込められているわけでもない。ただ「出られない」という認識だけを共有しパニックに陥っていく。
集団心理から政治/文明批判、神への疑念。合理的な解釈を拒みながら自由な解釈を誘うルイス・ブニュエル監督作。

シュールで不条理な雰囲気が堪らなく好きだったんだけど、今見ると出口を提示されながら何時までも抜け出せない世界は見慣れた現実となってしまった。最近は特にこの映画の「何故理解し合おうとしないのか、この状況から抜けだそうとしないのか」と感じる出来事が多々降りかかっているように思う。
スペインには今でもフランコ独裁政権下の出来事を潜ませる監督が多いけど、当時海外へ亡命し内外を見たブニュエルの映画は、半世紀以上の時を経ても未だに続く入れ子構造のようで引き込まれ惑わされる。
扉を開けても開けても続いていく無限ループのようで、これはブニュエル自身の「自由は霧のような、幻影のようなものだ」という言葉にも強く表れ反映されてる。
和桜

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