けんたろう

過去のない男のけんたろうのレビュー・感想・評価

過去のない男(2002年製作の映画)
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【2019年1月28日の記】
何もかもないゼロの状態の男が、トントン拍子に色んなもの手に入れてくはなし。

運命に忠実というべきなのか、出会ったものにそのまま従って生きるのはすごく映画的だなぁ😊と思いました。

でもなによりも違和感がすごい。
人間が住む普通の風景の上に、不思議な表情や歩き方があって物凄く違和感があった。なんか面白いなぁて思ったのは、違和感のせいなのかも。

そんで以前miyuさんが仰っていた女優さん、今作にもばっちり出てらっしゃいました😳
でも今回は上腕と脇腹、ボンドでも塗ったんですかて歩きしてた主演男優さんに興味が湧きました。
これはまた観たい映画が増えそうだ…幸せな憂鬱はまだまだ長く続きそうです。


【令和五年三月廿日の記】
時の流れに従うて淡々とテンポよく進みたる此の痛快さ。潔く、格好よく、其れでゐて非常に可笑し。最高である。
又た此の演出自体が、前へ進みつゞくる主人公の様と大きく重なりたるのも好い。カウリスマキの作風がテエマに合致してゐるとでも云へようか。兎にも角にも、もう何うしやうもなく惹きつけらる。
「何も問題は無い。時間は過去に進まない」といふ台詞は、其んな本作を如実に表してゐよう。何んだかウエス・アンダアソンの『ダージリン急行』と似た香りを感ずる面白さ。私し、途んでもなく好きである。

さて……さて……さて! 過去を得たとき彼れは一体何うするか! 何をするか! 何処へ向かうて歩ゆんでゆくか! 此処にこそ正しく本作のテエマが在らう。果たして、彼の運命と選択とには感じ入りたり。

バカスカ吸はるゝ煙草や、時たま日本趣味を覗かする音楽、可愛らしいのに名前がえげつないワンちやんなど、随所に散りばめられたカウリスマキ節全開の描写も大へん好い。特に盟友マツテイ・ペロンパアの写真が然り気なく飾つてあつたのに関しては、切なくて且つ微笑まく、堪らないものが有り。矢張りカウリスマキ、何処を何う切り取りても、最高である。


①2019年1月28日 DVD
②令和五年三月廿日 Amazon Prime Video