ウサミ

レオン 完全版のウサミのレビュー・感想・評価

レオン 完全版(1994年製作の映画)
5.0
とある店、怪しげな雰囲気の中、並々ならぬ会話をしているのは、闇の世界の人間と、丸いサングラスをかけた大きな男。
ある依頼を受けた彼は、鮮やかすぎる手つきで人を殺し、暗闇の中からただならぬ恐怖を放っている。

彼の名はレオン、凄腕の殺し屋である。

アパートの近くの売店でミルクを二本パックで買い、丁寧に服にアイロンをかけ、休日は『雨に唄えば』を観る。
殺し屋という職業でありながら、どことなく人間臭く、妙に心地のいい時間を生きる、変わり者の彼。たった数分でそのギャップにやたらと目が奪われてしまう。


同時に目を奪うのは、レオンのアパートの隣に住む1人の可憐な少女、マチルダ。

独特なファッションとヘアスタイル、端正で美しい顔立ち。この映画の最大の魅力といっても過言ではない彼女であるが、顔にはまだ新しいアザ、吸えないタバコを口にくわえていて、その美しい瞳からは、すでに幼き輝きは消え失せている。
しかし、アニメが好きだったり、弟を愛していたり。また、母親の声に似せて声色を低くしてみたり、レオンにお使いを頼まれて無垢な笑顔を見せたり…
映画の1つのピースとしてのキャラクターの姿と、少女としての可愛らしさ、可憐さを同時に魅せることで、マチルダとレオンの間に芽生える奇妙な絆を納得させる。


その2人の間にいるのは、ゲイリーオールドマン演じるスタンフィールド。
端正な顔立ちと清潔な格好、しかし、「あ、こいつ関わったらダメなやつだ」と瞬時にわかってしまう不気味さと恐ろしさを常に纏っている。
ヤクをキメながらベートーベンがどうだ言い、ショットガンをぶっ放すシーンは、キャラの本質を食った名演、名シーンというほかない。暴力的で潔癖で、冷静なようでキレたら何するかわからない、見事なまでの悪役でありながら、その完璧とも言える演技によってキャラに魅せられてしまう。
そんな彼の本職は、本物の麻薬捜査官だというのだから驚きである。


アブノーマルなキャラクターによって彩られる舞台は、実は退屈で単調というリアリティを持ちながらも、時にかなりスリリングである。
そんな日常の中で、レオンとマチルダの間には奇妙な純愛関係が生まれ、やがて互いの心を満たしあっていく。

“私に殺しを教えて”という、「殺し屋」という暴力的な世界に、可憐な少女を組み込んでしまうという意外性は、必ずや観る者の心を惹きつけ、そして一度引き込まれた心は決して離されることなく、この映画は駆け抜けていく。

アクション映画でありながら、独特なロマンスや上質な後味がある、男女問わず楽しめる名作である。
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