コーカサス

哀愁のコーカサスのレビュー・感想・評価

哀愁(1940年製作の映画)
4.6
名匠マーヴィン・ルロイ監督が描く『心の旅路』と並ぶラブ・ロマンスの傑作。

時は1917年―。
第一次大戦下のロンドンで出征前の休暇を過ごすクローニン大尉 (テーラー)は、ウォータールー・ブリッジで偶然に出逢ったバレエ・ダンサーのマイラ (リー)と恋に落ち、結婚の約束をする。
やがて出征したクローニンの帰還を待ちわびるマイラのもとに、戦死の報せが届くと運命は一変し、彼女は生きるために娼婦へと堕ちていく。
まさに“哀愁”に満ちた男と女の出逢いと別れを「蛍の光」の調べにのせて描いた美しくも哀しい愛の物語である。

女性の美的価値とされた配偶者や恋人に対する貞操が無惨にも戦争によって引き裂かれ、狂わされていくヒロインを見事に演じたヴィヴィアン・リーが素晴らしい。

モネの絵画でも知られるウォータールー・ブリッジは1934年に一度解体されるが、第二次世界大戦中多くの女性たちが建設に加わり再び開通し、現在ではその功績を称え「レディース・ブリッジ」 とも呼ばれ、親しまれている。
今も霧に包まれテムズ川に架かるその橋は、彼女たちとマイラの橋でもあるのだ。

43 2021