Hopelessness

ダークナイトのHopelessnessのネタバレレビュー・内容・結末

ダークナイト(2008年製作の映画)
4.6

このレビューはネタバレを含みます

一カ月程前に幸運にも、EXPOCITYにてIMAXレーザーで鑑賞できた。評判に違わぬ迫力そして映像美であり、その部分でも語るべきことは多かろう。
とはいえ、この投稿では例によってストーリーや人物関係の変化に焦点を当て、それを抽象化して捉えていきたい。

そこで、登場人物を次のような図式に落とし込むと全体の構造が捉えやすくなると思われる。縦軸にgood<=>evil、横軸にlegal<=>illegalをとり、

A | B
――
C | D

とする。この時、
A=(good, legal); Dent
B=(good, illegal); Batman
C=(evil, legal)
D=(evil, illegal); Joker
と、メインになる三人を区分できる。
空欄のCには、状況によって様々な人が入りうる。この作品から例をあげれば、買収によって自らをlegalな領域に留めようとするマフィア、腐敗した警察、そして自分の手では起爆スイッチを押すことができないにも関わらず、無記名投票でYesを選んだフェリーの一般大衆(嗚呼、なんと現在の政治・社会情勢と符合している哉)。

この表記を利用してストーリーを振り返れば、前半はAとBが手を取り合って、Cのマフィアを追い詰めていくという、単純な構図であった。
しかし、中盤からJokerが表立って彼らに絡み始めると、AとBの同盟関係は破綻する。DentはJokerに追われた挙げ句、Rachelの死を経て、Aの領域に留まることが出来なくなる。最終的に、彼はAとDを共に抱えたTwo-Faceとなりストーリーへ舞い戻ってくる。

JokerとBatmanの関係については、取調室でJokerが 'You complete me' と、自らがDの領域に存在し続けられるのはBの存在によってであり、相互補完的なのだと諭すシーンに集約されよう。
前作から一貫して、Batmanはevilへの対応が自分無しで完遂されることを望んでいたのだが、Jokerの存在により、それが不可能だと悟るのである。

そしてラストにおいて、Batmanがこの奇怪な三角関係をどのように清算しようとしたかは注目に値する。
彼はDentを純粋なAとして象徴化することに決める。つまり、DentがTwo-Faceであったというショッキングな現実を隠し、人々には彼が純粋な正義として存在していたという幻想を与えるのである。
しかし、おそらくここで必要だったのは「幻想を通り抜けて生き抜く」ことであり、それぞれがトラウマ的なまでの現実の非一貫性を受け止めることだったのだろう。そして、これは人間の本性についてJokerがしつこく示そうとしていたことでもあった。

この幻想で隠されたトラウマ的現実(JokerがBatmanに打ち込んだ"Ace")は次作: The Dark Knight Risesにおいて、彼を苦境に追いやることになる。

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ヒロインがBeginsと比べて随分と××になってて驚いたんだが、役者が変わってたのね(笑)
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