Hopelessness

サボタージュのHopelessnessのネタバレレビュー・内容・結末

サボタージュ(1936年製作の映画)
3.0

このレビューはネタバレを含みます

真実とされるものは、常に真理たり得るわけではない。

映画館の主人がテロリストに与していること、そして隣の八百屋の男が覆面刑事であることを観客が知ったうえでストーリーが展開される。ミステリー的な要素は最初に取り除かれ、観客の視点は、主人らが計画するテロがいかなる結末を見せるのか、そして主人の正体が、夫人と隣の覆面刑事に見破られるのかどうかという展開に集中する。

ここのおいて、観客は物語の真理を知っている、あたかも神のような視点からその展開を見守ることになる。
結果的にテロは失敗し、夫人の弟が死亡してしまう。ここで夫人と覆面刑事はテロの実行者という真理に別々の点から到達する。そのうえで半ば心神喪失状態の夫人は主人を刺殺してしまい、この事実を覆面警官と共有する。
その後、主人の同志であった男が刺殺された主人の死体もろとも爆弾で自殺したため、後者の事実・真理は、妻と覆面刑事の二人以外には検証不可能なものとなってしまう。

そこで二人以外の刑事たちは、後者の事実を無視し、テロに加担した主人とその同志の二人が自爆したという新たな真実を構築する。この映画の最後のセリフ 'I can't remember' が、まさしく夫人が殺害を犯したという事実を落とした偽りの、だがこの映画世界における真実のために不可欠なプロセスであること、これを観客は見せつけられるのである。
Hopelessness

Hopelessness