LalaーMukuーMerry

汚名のLalaーMukuーMerryのレビュー・感想・評価

汚名(1946年製作の映画)
4.4
私の名はデブリン、アメリカの諜報機関の部員である。自慢するわけではないがケイリー・グラント似の二枚目である。上司の指令で、ある娘に近づくことになった。彼女はドイツのスパイを父に持つ。その父は国家反逆罪で捕まったばかりだ。これを機に奴の持つスパイの繋がりをたぐって、ブラジルのリオにいる大物スパイ、アレックス・セバスチャンの秘密活動の情報を手に入れるのだ。スパイたちは世間を騙すためにいかにも善良な市民を装って家族ぐるみのつき合いをしているものだ。だから彼女はセバスチャンとも顔見知りである。しかも彼女は自分の父がスパイと知ったのは、ほんの数年前で、そのことで父と仲が悪くなったようだから、我々に協力してくれるかもしれない・・・
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驚いたことにその娘アリシアはイングイッド・バーグマン似の絶世の美女だった(私はメチャクチャ喜んだが、諜報員たる者、決して顔には出さない)。軽い会話、ドライブを重ね、彼女は私にまんざらでもないようだ(なんという役得!)。しかも「手を握っていいわよ」と小悪魔のような笑顔で、私をからかい、挑発的に迫ってくる。ええい、我慢できない。いきなりキス!(諜報員たる者、それでも冷静を装い、「愛しているよ」などと決して口走ってはいけない)
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上司から具体的な指令が来た。アリシアをセバスチャンの愛人にさせて奴の家に出入りさせろという。私はうろたえた。彼女にそんなことをさせたくない。が、反対できる立場ではないし、へたに反対したら彼女に対する私の気持ちがバレてしまう、そんなことは諜報員のプライドが許さない・・・
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彼女に指令を伝えた。悲しげに「反対してくれなかったの?」と聞かれたが、私は(必死で我慢しながら)平静を装って「やるかどうかは君が決めろ」と冷たく言った。
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彼女は、うまくセバスチャンの屋敷に出入りするようになり、交友関係の男たちの名前がわかり始めた。私は公園のベンチで時々アリシアと会いセバスチャンの家の情報を仕入れた。この短い逢う瀬が楽しかった。あの屋敷には怪しいワインがあるようだ。これをもっと調べよう・・・
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だがある日、アリシアが爆弾発言。「セバスチャンにプロポーズされたの、どうすればいい?」

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このあたりまでは、素直に気持ちを伝えられない男女のラブストーリーなのですが、後半はいかにもヒッチコックというサスペンスになって引き込まれます。暗示的なラストの演出にも唸らされる、よくできた作品でした。
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善良な市民風のスパイといっても、もの凄い豪邸に住んでいる大金持ちだし、サスペンスといっても、殺人や流血シーンもなく、むしろラブロマンスが絡むおかげで誰にでも楽しめる作品となってます。面白かったです。