むさじー

サムライのむさじーのネタバレレビュー・内容・結末

サムライ(1967年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

<葉隠精神の殺し屋の孤独を描いた仏ノワール>

孤独な殺し屋が、己のスタイルを貫いて自ら死地に赴いていく、そんな主人公を日本の“侍”にイメージさせている。
白い手袋と一度しか使わない拳銃、自分を助けてくれた女性がターゲットになったとき、自ら「死」を選ぶ。
クロークに帽子を預けて受け取りは手にしない。その必要がないことを知っていたから。
寡黙で冷静、ストイックな殺し屋、虚無感を漂わせながらクールにハードに仕事をこなしていく、そんな主人公にぴったりなドロンだった。
仏フィルム・ノワールの傑作と言われるが、アメリカのノワールに比べると殺し合いも静かでスタイリッシュに映る。
この静謐さと緊張感が素晴らしいし、それを支えるカメラワークも見事で、全体的に灰色がかった色調と硬質な映像が印象に残る。
ただ、タイトルもそうだが、“武士道”とか“葉隠”とかの精神が前面に出過ぎている。
「武士道とは死ぬことと見つけたり」の精神がエンディングにつながっているようだが、この殺し屋の行為が侍の精神かと問われると、どこか違う気がする。
カルチャー・ギャップというか、東洋思想の持ち込み過ぎによる不協和音のようなものを感じた。
とはいえ、プロの殺し屋の孤独、死生観がしみじみ伝わってくる名作だと思う。
むさじー

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