April01

真昼の決闘のApril01のレビュー・感想・評価

真昼の決闘(1952年製作の映画)
4.3
映画通でないから、西部劇も詳しくない。でもビジュアルとタイトルから、たまには西部劇いってみよう~♪というノリで観始めたら、次第に微妙な空気に。
しかもなかなか肝心の真昼にならない~!決闘はやく~!
再三にわたって登場人物たちが時計を見るんだけど、自分も全く同じように画面の時計を見て唸ってた感じ。実際の経過時間と映画の中の時間がシンクロしてるみたいにスローで、要は時間がスキップして大胆にストーリーが展開・・しない!
でも・・・そのうちスッキリするんだよねって思いながら見てた・・けれど、何これ!😆これが西部劇というもの?と完全に拍子抜け、と同時に期待と違ったのがかえって新鮮で面白かった。

しかも見てから知ったけれど、監督さんは私の大のお気に入り作品「ジャッカルの日」のフレッド・ジンネマン。
恥ずかしながら他の監督作は見てなかったので、「ジャッカルの日」が好きな理由が分かったかも!と大満足。

この作品、見ながら色々思うことが多すぎ。
まずいきなり、主人公が年寄りすぎてこの物語大丈夫?と思ってしまう。冒頭の結婚式、年の差カップルにもほどがあるよね~、と。全然ロマンチックな感じがしない。グレース・ケリー演じる新婦エミイが若くて美しく、何を血迷って初老のオヤジと結婚、そしてこの後一体どんな生活を夢見ているのか子作りする気?などとしょうもないことを考えてしまう。要は不釣り合いだな~と!しかも現役保安官ならまだしも定年退職?で余生を送る身ってもう出だしから自分的には引いているわけで。。。

さらには、いったん逃げておいて引き返す!なんかヒーローっぽくない。一心不乱に馬車で逃げていた分Uターンがとてもダサく見えてしまう。しかも覚悟を決めてからも馬小屋に行き躊躇してたり下っ端に気持ちを見透かされて物凄いリアルな喧嘩を始めたり、そんなことしてる場合か~!と叱りたくなるくらい、うろついている、この人。

それと結婚式を祝ってた空気が一変するのが面白すぎて。集まってた人達どこ行った?ていう。みなさん変わり身早すぎだよ~。

男連中がわさわさと表面的もしくは水面下でなにやら動いている中、エミイと酒場のメキシコ女ヘレンの気持ちの動きがとても潔く描かれていて物語の軸になっていると感じる。
特に酒場オーナーのヘレンがカッコイイ。彼女はかつては敵側の女でもあり、主人公の女でもあった。エミイが彼女の存在を気にして対面する心理的に複雑な葛藤とヘレンに進言される一連の流れは見ごたえあり。
可憐な白人女性エミイと異郷の地で経済力で根を張り男どもを翻弄するヘレンの姿の対比が良い!ヘレンが汽車に乗り込む前に昔の男を一瞥する視線と毅然とした態度が特に好き。そしてエミイの選択を見届ける傍観者でありながら当事者であり助言者として大きな存在感を示す一方で、あとはどうとでもなれとでも言うような異端者、外国人としての諦観が感じられることも物語に深みを与えている。

単純な話を期待して気楽に観始めたら、なんか全然違うものを見せられて本当にビックリ!舞台は西部劇だけれど、現代にも通じる人間の本質的な弱さ、同時に弱さと表裏一体の強さのようなものを描いていてとても心に残る良い作品。
April01

April01