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シンデレラのmaverickのレビュー・感想・評価

シンデレラ(1950年製作の映画)
4.3
1950年のディズニー長編映画。言わずと知れたディズニーの看板作品のひとつであり、アニメ業界のみならず後世に多大なる影響を与えた傑作中の傑作。どんなに辛い状況でもいつかきっと報われるというメッセージ性が美しい。


基は童話であるが、今や『シンデレラ』と言ったら本作を思い浮かべる人がほとんどだと思う。シンデレラストーリーの語源も本作のイメージ。当時ディズニーは1937年の『白雪姫』以降のヒット作が生み出せず、かなりの経営危機に陥っていて後がなかった。それを救ったのが本作。そこから立て続けにヒット作を生み出し、今のディズニーに繋がった。本作がなければ今のディズニーは無かったかもしれない。奇跡を起こしたシンデレラ自身と重なる物語だ。

美麗なアニメーションが素晴らしい。あまりの美しさにため息が漏れる。これぞディズニーアニメーションの美麗さだ。ヒロインであるシンデレラがまた美しい。召使いとしてこき使われみすぼらしい格好をさせられても、育ちの良さと内面の美しさが一目瞭然で分かる。困難な状況においても自分を見失わず、思いやりと優しさを持って常に前向きにあろうとしている。エレガントでありながらたくましくもある。これがシンデレラの美しさだ。

逆境でも耐え続けていればいつか奇跡が起こる。そこだけに注目してはいけない。重要なのは、そのような状況でシンデレラがどうであったかということだ。

シンデレラはどんな状況でも自分を見失わなかった。どんな酷い仕打ちを受けても、物や動物たちに当たることはない。優雅に歌い、心の平穏を楽しんでいる。シンデレラの真の美しさは外見にあらず。内面の美しさがそのまま外見に表れている。そういう彼女だから奇跡を掴めたわけだ。酷い仕打ちに文句ばかり言っていたら、それが顔にも表れてきただろう。動物たちに優しくなければ彼らの助けも得られなかった。フェアリーゴッドマザーも、彼女の心の美しさに惹かれて魔法をかけてあげようという気持ちになったはず。そんな彼女自身の魅力的な美しさがあったから王子も一発で虜にしてしまった。ただ美しい女性なら王子も今までたくさん見てきたはず。フェアリーゴッドマザーは王子に魔法をかけてはいない。王子に魔法をかけたのはシンデレラ自身なのだ。逆境にあっても大事なこと。それをウォルトディズニーは作品に込めている。せっかくのチャンスを全く活かせない継母とその娘たちがシンデレラとは対称的に表現されていて分かりやすい。

動物たちの活躍が初期のディズニーアニメらしい部分。シンデレラのストーリーは有名だけど、こんな風に絡んでくるんだね。チップとデールみたいで可愛らしいけど、大人になって観るとちょっと盛り込み過ぎかなと感じた。猫とネズミのバトルが多くて『トムとジェリー』のようでもあった。これに対して後の実写版は、シンデレラを中心としたドラマとして作り上げられていてそこが好きだった。まぁ子供的にはアニメ版の方が楽しめるだろうし、そこから大人になった人へ向けての実写版だったのだろうし。どちらも良さがあって素敵だ。未見の人は実写版も是非。


シンデレラって可憐なイメージがあったけど、結構たくましいのが驚きでもあった。あとかなりセクシーで、そこもびっくり(笑)。アメリカ人の女性らしい美しさをイメージしてあるよね。今のディズニープリンセスよりリアルさがあるなと。大人になってから再度観ると新たな発見がいろいろあって面白い。メッセージ性はより響くし、今の時代にも必要なことが描かれてある。

逆境においてもシンデレラのようにあるか、それとも継母や娘たちのようになるか。答えは明白だね。
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