くわまんG

機動戦士ガンダム F91のくわまんGのレビュー・感想・評価

機動戦士ガンダム F91(1991年製作の映画)
4.5
「目の前の景色に囚われていたら何も見えない、何も感じられないわ。」

みどころ:
許し合う人たちの人情物語
ボリューム満点のドンパチ
凄まじいクオリティの作画
さらりとオカルト発言連発
人物描写が史上最も穏やか
森口博子一世一代の主題歌
非ガンダムファンに最推薦
煩雑だけど理解不要の背景

あらすじ:
アムロVSシャアののち世界はしばらく平和だったが、案の定統一政府である地球連邦は腐敗し、相変わらず宇宙棄民問題は棚上げ。
そこへ武力介入したのが、クロスボーンヴァンガード(CV)。貴族のノブレスオブリージュによる統治を掲げて侵攻、連邦軍は瞬く間に壊滅。
巨大人工衛星スペースコロニーに住む高校生シーブックは、命からがら戦火を逃れて連邦の艦に避難できたが、道中愛しの同級生セシリーとはぐれてしまう。だがなんと、次に彼女を見たのはTVの中。CVの女王ベラ・ロナを名乗っていた……。

20年ぶりくらいの鑑賞でしたが、この歳になって観ると刺さる名台詞のオンパレードでした。この際だから後でメモっておこう♪笑

とにかくまず戦闘シーンが素晴らしい!アムロもシャアもザクもジムも出ませんが、純粋なロボットバトルおよびミリタリーアクションとしてかなり上質!なので、ガンダム初心者の方に一等オススメです♪いやぁやはり90年代の作画クオリティは素晴らしい、CGじゃ絶対にこの質感は出せないでShow!感シャアっ!!

また、相変わらず戦争映画としても完成されてるんですね。人々は薬莢に当たって死に、爆風に飲まれて死に、機体の大破や誤射に巻き込まれて死に、殺人ルンバに八つ裂きにされて死に、宇宙空間に放り出されて死にます。地獄絵図です。

さて、物語はかなり複雑な背景を抱えていますが、ざっくり言えば統合軍VSテロリストですね。なんとテロリストが勝利して終幕なのですが、超ホットなハッピーエンド☆これが肝ですよね(´∀`)

市民救助をほっぽり出して保身に走る連邦にも、幼稚なエリート主義を地で行くCVにも、掲げている正義はある。しかし、「自分たちが正しくて反対派は誤り!」という考えに正義が宿ろうはずも無く、原理主義者同士の戦いに真の勝利など無い。このニュータイプ(垣根を乗り越え、傷つけ合っても許し合える心を常備する新人種)が迎えたハッピーエンドにこそ、勝利へのヒントが含まれているのではないか。そんな新時代の幕開け=THIS IS ONLY THE BEGINNING…完璧ですねぇ♫


以下備忘録です。


「力ある者は弱者のために血を流せ!」と、CVの主張は一見ご立派。ところが総統マイッツァーの具体策は「理想郷実現にあたり人口過剰ですので、惨殺で10分の1に減らします!」で、その心は「悪逆非道を引き受けるのは辛いですが、これも強者の使命!殺人頑張りますので、弱者の皆さんよろしくお願いします(死んでください)!」というマジ〇チ思想。言ってることとやってることが全然違う、低俗なテロリスト。そもそもが、駆け落ちした実娘ナディアを、体裁のため問答無用で勘当するような利己主義者で、更にはそのナディアの娘をとっ捕まえて広告塔にするような恥知らず。ナディアの家庭内クーデターに付き合わされた挙げ句、義父から切込隊長としていいように利用されたカロッゾには、同情の余地さえある。

「(偽りの大義を担ぐセシリーに対してシーブックが)軍事力をもって出てきた者は、武力制圧しか考えないということを、なぜわからないんだ。」
「(おめおめと帰ってきたセシリーに対して同級生が)今は言いっこなしじゃない?みんな、巻き込まれちゃったんだよ。ここはさ、軍艦じゃないんだから。セシリーも、いてもいいんだぜ?」
「(それに対して出撃で応えるセシリー)わたし、この艦の方が何も言わずに私を受け入れてくださって、嬉しかったんです。」
「(息子を乗せるために兵器開発に携わったわけじゃないと身勝手を言うシーブックの母モニカに対して整備士長ナントが)じゃあ何ですか奥さん!お子さん以外の者が戦って死ぬのは、構わないと言うんですか!?」
「(NT専用兵器による殺人を強いられたシーブックがその開発者たる母に対して)でも、NTって人類の革新、戦争など超えられるって説もありますよね。もしそうなら、僕らを糸口にして、人類全体がNTになる方法を考えるのも、悪くないんじゃないですか。」
「(なぜ生きねばならないかについてシーブックが)死んでから考えたり、やり直しをするっていうのは、難しいでしょう。」
「(セシリーが吹き飛んでパニクるシーブックに対してモニカが)目の前の景色に囚われていたら何も見えない、何も感じられないわ。甘ったれないで!心を静かにして気持ちを統一するの。意識は空にして、宇宙に漂っている命の鼓動だけに感覚を開くのよ。貴方だけを求めている命が、呼んでいるでしょう?」
「(何も感じられない!と頭を掻きむしる息子に対してモニカが)だったら引き寄せなさい。それができるのも、人の命の力なのよ。」