このレビューはネタバレを含みます
生という日常と、死という非日常。
生の側から死を受け入れるには、非日常的な儀式が必要だ。
弔いの儀礼を映像として見せるのに、
本木雅弘はうってつけの人材だと思う。
とにかく所作が美しい。
一方で、いろいろと違和感を感じる作品でもあった。
映画は「日常生活では気に留めるのが難しい細かな物事を、美しく切り取ることができるメディア」だとぼくは思ってる。
せっかく弔いを美しく描き出しているのに、日常の描き方が全く美しくないのが残念だった。
「生き物が生き物食って生きてる。死ぬ気になれなきゃ食うしかない。」
いいセリフだ。
ただ、それをフグの白子やフライドチキンを食らう場面で表現するセンスはあまり好きじゃない。
生を描きだすのに、食い物にむしゃぶりつくのは、あまりに安易ではないか。
なぜか、外でチェロを弾いているが、
美しさとは、そのようなことではないと思う。
また、大事にされているはずの納棺の儀を、自ら台無しにしている場面があったのも悲しかった。
納棺を行っている最中に、夫婦で見つめ合うのはどうなのか。納棺の最中は納棺に集中してほしかった。
このように好きじゃないポイントばかりに目がいってしまうのは、逆に好きなポイントがあまりなかったからかもしれない。