OASIS

ブロンド少女は過激に美しくのOASISのネタバレレビュー・内容・結末

3.5

このレビューはネタバレを含みます

列車の中で隣の席に座った夫人に向けて青年が思い出話を語るという話。
ポルトガルの作家エッサ・デ・ケイロース原作小説の映画化。
監督は106歳でこの世を去ったマノエル・デ・オリヴェイラ。

表層部分にしか映らない美しさにまんまとハマり込んでしまうのは抗えない男の性。
物事の表裏は影と光によって炙り出され、いたずらな風によってもまた違う模様を見せたりする。
そんな、靡く風に翻弄されるような危険に自ら踏み込んでいくのも、男という生き物のどうしようもない哀れさか。

リスボンから南に向かう列車の中で夫人の隣に座った青年マカリオは、どうしても話しておきたい事があると夫人に経験した恐ろしい出来事を語り出す。
叔父の元で会計士をしていたマカリオは、向かいの家の窓に時々姿を現すブロンドの美少女・ルイザに一目惚れしてしまう。
風に揺られるカーテンの余白を隙間なく埋め尽くすルイザの艶かしさと物憂げで怠惰な微笑み。
団扇をはためかせながら鐘の音と共に現れる少女の筆舌に尽くし難い美しさは、カーテンに恋してしまったのか、はたまた団扇に恋をしてしまったのか判断がつかなくなるほど画面全てを眩く照らしていた。

次第にルイザと親しくなって行くマカリオだったが、仕事を失い、借金の保証人にもなり離れ離れになってしまう。
見た目の美しさに惑わされがちになるが、初めから男を手玉にとるような態度を見せるルイザの表情等はかなり打算的。
マカリオもちょっと仲良くなったくらいではしゃぎ過ぎではないだろうかというくらいの初心さを見せるしで、遊ばれている感が満載のまま進むので徐々にいたたまれなくなって行った。

新たな仕事に就き財産を築いたマカリオはルイザの元へ急ぎ、結婚を申し込む。
しかし、指輪をプレゼントする事にした矢先、ルイザが指輪を盗もうとするという事件が発生する。
常習的なものか、それとも衝動的な行動なのか。
どちらにしても、謝罪の素振りすら見せず「私に恥をかかせないで」と盗んだ品物の金額を払わせようとする辺り、とんでもなく性悪な女なのは間違いなかった。

百年の恋も冷める瞬間を情熱的な恋とは正反対にアッサリと、そしてバッサリと描く弄び具合に揺れる女性への不信感。
陽が昇ったり沈んだり、ルイザの持つ団扇が裏表を行き来したりと、二面性を持つ風景と物事を強調するような演出が印象に残る作品だった。
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