カルダモン

黒猫・白猫のカルダモンのレビュー・感想・評価

黒猫・白猫(1998年製作の映画)
4.3
ユーゴスラビアの田舎町。ブラスバンドが鳴らす派手なビートに乗せて、右へ左へと転がり回る人間模様。
男女、親子、兄弟、友人。スパゲティのようにさまざまな関係が絡まり合いゴチャゴチャになるのだが、最後にはまるごと結婚式のテーブルに並べてしまう。『アンダーグラウンド』同様にクストリッツァ監督の忙しくて騒がしいオーケストレーションを味わえる一作。

何をやっても失敗するマトゥコと、妹思いでヤク中のダダンがとにかくヒドイのだが、駄目さにまつわる悲喜こもごもがとても人間臭く、イライラムカムカしつつも生きろ!と願う。
クストリッツァ作品の大きな特徴である音楽と動物はここでも大暴れしており、今作では特に大量のアヒルが凄まじいビートを与えている。本来、物語の本筋とは関係ないはずの要素が映画の中では見事に生きる。やっぱり映画の面白さはこういうところ。

画面に映る何もかもが活力に満ちていて、見終わった後には不思議な高揚感で熱くなる。
背の低いアフロディータが切り株を被って逃げる姿やヒマワリ畑を駆け回るイーダが可愛らしい。病院にブラス楽団が押しかけて、ガンガン音楽を浴びせるなど、なかなかに不届きで活力をもらえる。

そんな大騒動を黒猫と白猫はずっとそばで眺める。我関せずと思いきや最後には大役を与えられて(笑)