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ライアンの娘のメルのレビュー・感想・評価

ライアンの娘(1970年製作の映画)
4.0
1916年、英国支配下のアイルランドでは独立運動の機運が高まっていて、海辺の小さな村でもそれは例外ではなかった。

独立運動を支援している居酒屋の主人ライアン。
その一人娘は地元の教師と結婚するが、その生活は思い描いたものとは違っていた。
そこへ第一次大戦で負傷した英国の指揮官が赴任して来て…。

反英国世相の高まる田舎町を舞台に、人間の愚かさ、弱さ、気高さ、強さがバランス良く描かれている。

夫を裏切った妻、娘を身代わりにした父、娘はそんな父親を庇い、夫は自分を裏切った妻をかばう。

特に英国軍の上官同士が話す、前線へ出て行くことの恐怖は切実に伝わって来る。
戦場を描かなくても、戦士たちの死体を積み重ねなくても、戦争の悲惨さが暗く身につまされる。

「アラビアのロレンス」で砂漠を描き、「ドクトル・ジバゴ」では雪と氷を描いたデヴィッド・リーン監督が、今作ではキラキラと輝く眩しい浜辺と、怪物の様に人間に襲いかかる嵐の海を凄い迫力で見せてくれる。

夫のロバート・ミッチャムが本当に理性的で素晴らしいのと、勧善懲悪を実行し狂乱する村人を収められる唯一の神父の存在は大きかった。

風に飛ばされるパラソルや帽子👒が色々な場面で使われていて、もしかしたらあれは自由に恋をし舞い上がる娘の象徴であり、結婚後にも自由に恋をし社会から制裁を受けて村を追われるライアンの娘自身を表してるのかも…。
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