むさじー

肉弾のむさじーのネタバレレビュー・内容・結末

肉弾(1968年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

<戦争の哀しみをシニカルな目と笑いで描く>

戦争と笑いというのは、その取り込み方もバランスも難しいと思うが、岡本のそれは絶妙である。
戦争がもたらす哀しみ、寂寥感を笑いに変える術を持っている。
学徒動員に始まり、幹部候補生から任官までのエピソードは、“軍隊組織の馬鹿馬鹿しさ”をシニカルに、腹で笑い飛ばしている。
外出が許された出撃前の一日で、様々な人々に出会い、運命の少女に出会い、自分が戦い死んでいく理由を見つけるが、それは叶わなかった。
その切なさ、やるせなさを叫んだまま20年余が過ぎ、白骨化したあいつは何を叫んでいるのだろう。
高度経済成長で豊かさを享受していた時代の若者に、彼が死を賭して向かった思いは届いているのだろうか。
岡本自身の戦争体験や思いが、あいつからのメッセージになっている。
あいつとうさぎ、この二人を見ていると、裸の肉体でしか表現できない感情(切なさ、熱い想い、明日をも知れぬ命)があると思えてくる。
それを演じた寺田の肉体的存在感は際立っているし、大谷の18歳デビューの初々しさもいい。
むさじー

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