Kamiyo

地下鉄(メトロ)に乗ってのKamiyoのレビュー・感想・評価

地下鉄(メトロ)に乗って(2006年製作の映画)
3.0
2006年”地下鉄(メトロ)に乗って”
監督 篠原哲雄  脚本 石黒尚美
浅田次郎原作の一種のファンタジー小説の映画化。
タイムトラベル物とも言えるだろうが
時空を越えなければ親子の相互理解ができないストーリーにしなければならないのかねえ?

見せ場であるタイムトラベルの描き方が雑すぎる。
「ある階段を登ったら昭和39年だった」まではいいとして、その後は浮気相手と寝ていたらタイムトラベルとか、そういういい加減な設定、ありえません。
この作品の最大のキーマン父親小沼佐吉(大沢たかお) タイムトラベルは小沼佐吉の「過去」を追うものなのだが、冒頭で母親長谷部民枝(吉行和子) や長谷部真次(堤真一) をあんな風にぶん殴るシーンを見た後で、「その父親小沼佐吉の過去を覗いてみよう!」
なんて展開にされても、すでに覗く気になれません。
共感できません。

営業マンの長谷部真次 は小さな衣料会社で営業をしている40代のサラリーマン。
仕事帰りの地下鉄の駅で、父小沼佐吉が倒れたとの連絡を受ける、病に倒れた父を見舞うよう弟小沼昭一(北条隆博) に言われても、傲慢な父と衝突して家を飛び出し、それ以来縁を切った真次は、
どうしてもその気になれないでいた。
気難しく威圧的な父とは高校卒業と同時に絶縁しており、長い間顔を合わせていなかった。
地下道を歩きながら、父とケンカして家を飛び出したまま帰らぬ人となった兄を思い出す真次。
そんな彼の前を、亡き兄に似た人影が横切る。
後を追って地上へ出ると、そこは兄が死んだ昭和39年の東京だった……。

この物語のきっかけとなる「兄貴の死」。
原因となった父佐吉との喧嘩、「僕は京大に行きたいというのに、父佐吉は東大でないと許さないというんだ」・・・「京大ではダメ!東大のみ!!」と言い張る父佐吉というのは、自分が東大出か、かつて東大を目指していたかのどちらかです。戦争で命からがら生き延びて大学に行けなかった人間は「大学にいけ!」とは言っても「東大じゃー!」とは絶対に言いません。

長谷部真次だけでなく、軽部みち子(岡本綾)がタイムトラベルに巻き込まれる理由は最後に明かされるわけだが、

真次が不倫をしているが、妻や子供に不満があるような描写も無く、感情移入が出来ない。そもそも途中までごく普通の恋人の様にみち子は描写され不倫をしている事さえ観客側にはわからない。
愛する者へ働きかけが長谷部真次から兄へ、父佐吉へ、
恋人みち子へと変わるが最後になって恋人みち子からの視点になって解決?されてしまう。
次の場面では感動させてくれるかと思っている内に終わってしまいました。
まぁ最後の展開だけは唖然とさせられるますが・・・

不倫でかつ近親相姦なんて衝撃的ではあるけれど
現時点でのみち子の人生がそうだったからといって
みち子の母親お時(常磐貴子)に宿った自分みち子の命を自ら始末するなんて・・・。確かに、母親お時は自分の幸せより愛する人の幸せを大事にして、とは言いましたが、それは「子供を持つ」という根源的な親としての幸せを奪うものとは全く別次元だし
最後に母親を殺そうなんて!一番君を愛してた人なんだよ。

ラスト近くで、岡本綾演じるみちこの自殺。
「不幸だとわかる人生を、自ら否定し、命を消すことを美化する。」この点において私は全くこの映画に共感できなかった
岡本綾という女優は,個性が強くない気がしていたが
本作では大人しく儚げな感じが役によく似合っていた。

大沢たかおさんの演技は鬼気迫るものがあって良かったと思いますが・・・
役者の演技はよかったし、レトロな時代の東京の雰囲気もよかっただけに、基本設定が残念。
この作品は、堤真一の演じる真次と同じような妻子ある男性でないと、分からない部分があるかも知れませんね。。。。

「メトロに乗って」なんて、素敵な響きをタイトルを与えておきながら、この内容ではお粗末さまとしか言いようがない。。(気を悪くされた方、すみません・・・)
Kamiyo

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