Melko

木と市長と文化会館/または七つの偶然のMelkoのレビュー・感想・評価

3.5
「緑?至る所にあるじゃないか。緑に囲まれた田舎だよ?」
「町にはあるけど、ここにはないの。市長さんの庭は広いけど、みんなのは狭いのよ。昔は草原で遊んでたって読んだの。花を摘んだり、てんとう虫を捕まえてた。今は鉄条網で入れない。」

草原や田舎や森があるから、田舎なの

詰まるところ、言いたいことはラスト15分と言うことでよろしいか?

いやー、グダグダと大人の中身がありそうでない会話を延々と聞かされるもんで、めっちゃ眠かった。しかも1カットが異様に長い(ように感じる)ロメールの作品って知り合い家族のホームビデオを見てるような画質と画角だし、懐かしんで軽い気持ちで見始めたら何かよく分からない小っ恥ずかしい内輪ネタが10分ぐらい続くから、「もういいや」って早送りして次のシーンが見たくなる…衝動に何度も駆られた。みんな話が長い!で結局最後まで辛抱して見ても、「なぁんだ、言いたいことはそれだけ?」と肩透かしを感じてしまう。
それはまるで…中身が薄く、延々と提議/答弁を繰り返した挙句に結論も解決策も何も出ない「国会」を見ているかのような…
あー、国会中継見ててたまにすっぱ抜かれる居眠り議員の気持ちってこんな感じなのかな、ってちょっと思った。

理想だけ語って現実や反対意見を軽視する若手議員にも、反対するだけしといて解決策が薄くとにかく悲観的でなんとなくこの人と話したくないな感を出してくる教師にも辟易したけど、中でも一番鼻についたのは議員のガールフレンドである小説家。
「せっかく前衛的で美しい建物を建てようとしてるのに、駐車場に車が何台も停まってる姿は醜い。地下に収納しちゃえば?」とか予算度外視のハチャメチャ意見や、「余命を守るために嫌。醜く生き延びるんだったら美しく自殺する」なんてのたまう。延々喋るくせに知識も浅め。記者の言葉を借りれば「うわべだけ」

地方を心から愛し復興させたいが故、まずは都会で戦わなければならない現実も分かるが、教師の言うように「なら田舎で働け」と言いたい気持ちもわからなくはない

あとレビューで言われてる方もいるように、終盤の大事なところのメッセージを子供に言わせたのは、説得力ありそうに見えてめちゃくちゃあざとさを感じてしまって、言いたいことはわかるけど心には響かなかった。そんなことしたら誰でも耳を傾けますもの。そのやり方はズルい。父親と一緒に主張する、ならまだ良かった。

何度も出てくる印象的なクラリネット?の音はそのままラストの歌に。
この作品から30年。作品中で言われてたように、PCで家にいながら仕事できるようになったし、職人技は本当に消えかけてる。
語られた言葉と同じ路を辿っているのは、果たしてどうなのか。
Melko

Melko