ひろ

西部戦線異状なしのひろのレビュー・感想・評価

西部戦線異状なし(1930年製作の映画)
3.9
エーリッヒ・マリア・レマルクのベストセラー小説「西部戦線異常なし」を、ルイス・マイルストン監督が映画化した1930年のアメリカ映画

第3回アカデミー賞で作品賞と監督賞を受賞した

「オーシャンと11人の仲間」などで知られるルイス・マイルストン監督。トーキー映画初期に、トーキー映画の素晴らしさを知らしめた監督であり、この映画は反戦映画の金字塔として語り継がれる名作だ。注目点は第1次世界大戦を描いた作品で、第2次世界大戦前の反戦映画ということだ。

世界的な大ベストセラーとなった原作だが、反戦的な内容のため、ナチスの時代になり禁書になり燃やされたという。アメリカ映画として異色なのは、アメリカ人が登場せず、ドイツの若者の目線で反戦を描いていること。言語が英語なのと、登場人物の名前までアメリカ名になっているから、ドイツ人に見えないんだけど、服装とか髪型とかは完璧に当時を再現しているみたい。

この映画が反戦映画として素晴らしいのは、戦争で死ぬことの無意味さ、兵士と世論の溝、1人の兵士の死では何も変わらないことなど、徹底的に戦争を否定していることだ。現代の戦争映画は、1人の兵士をドラマチックに描いたりしているが、戦争はドラマチックなんかじゃない。戦地での絶望、帰郷した時の世間とのズレ、はかなく散る命。それが伝えるのは、戦争の虚しさでしかない。

主人公であるポールを演じたリュー・エアーズは、この役を体験したことにより、第2次世界大戦で戦うことを拒否した。しかし、戦わない奴は臆病者と言われる異常な時代だったがために、映画界から干されてしまった。それでも、彼は戦争を否定し続けた。

戦争映画が好きという人がいる。自分もその1人だが、それは戦争を知らないから言えることなのかもしれない。戦争を知っていたら戦争映画なんて観ないに違いない。でも、反戦映画は大切だ。起こってしまった戦争はもう取り返しがつかないけど、これから起こさないための予防薬だから。戦争を否定する心を養うためにも、良質な戦争映画を観てもらいたい。
ひろ

ひろ