滝和也

日本侠客伝の滝和也のレビュー・感想・評価

日本侠客伝(1964年製作の映画)
3.8
高倉健を東映が
任侠路線の大看板に
押し上げた作品。

萬屋錦之介を助演に
迎え、後の大スター達が
華を添える…

「日本侠客伝」

鶴田浩二の博徒シリーズに続いて東映が任侠路線の第二弾として送り出した高倉健主演の大人気シリーズの第一作。東京東映で現代アクションで今一つヒットに恵まれていなかった健さんが東映の金看板となった作品です。

東京深川、木場に組を構え運送を仕切る木場政組。振興ヤクザの沖山組の汚いやり口に仕事を奪われていた。昔気質の親分に率いられ、客分の清司(萬屋錦之介)と共に何とか体面を保っていたが、親分が病に倒れ亡くなる。窮地に立つ組に兵隊から兄貴分の長吉(高倉健)が戻ってくる。亡き親分の言付けを守り、度重なる沖山の嫌がらせに耐える木場政組だが…。

東映任侠路線の骨格である、我慢劇を作り上げた作品。昔気質の任侠道を守り、粋で鯔背で無骨なキャラクターが度汚ねぇ外道の横槍に耐え、最後に怒りを爆発させると言う展開が真骨頂であり、その本筋は赤穂浪士に源流を持つそうです。

日本人は判官贔屓であり、弱きを助け、強きを挫くと言う性分が存在し、物事の筋道を大事にする国民性があり、また男におしゃべりな器用ものより、無口無骨な真面目なものを好む傾向が強い時代でもありました。

正にこの全てに当てはまるストーリーと主人公が創造され、これにピタリとハマったのが高倉健さんだと思います。これ以後、高倉健さんはこのイメージを演じ続けることでソノモノなっていく訳です。

今作は、元々萬屋錦之介を主演として考えられていましたが、任侠路線を嫌った錦之助が主演を蹴り、高倉健主演が決まったものの、心配した東映が錦之助を口説き落とし、助演させた曰く付きの作品ですが、そのため、主人公と流れ者のコンビによる我慢劇が創造され、これが後の昭和残侠伝で昇華します。

また今作では各キャラクターの書き込みが巧みで我慢劇の中で野郎たちの見せ場があり、それぞれが男を魅せる部分も素晴らしい。ガキの頃の友人が敵の台頭である大木実、軽妙な演技で女を助ける長門裕之、喧嘩を止めるため身体を張る田村高廣と健さん以外にもスポットが当たります。勿論萬屋錦之介も中盤に見せ場が用意され、ラストへの鍵になります。

更に彼らを支える女優陣も正に大輪の華を咲かせる美しさ。健さんの相手役に藤純子様。まだあどけなさを残す可愛らしさ。錦之助の妻役に三田佳子さん。更に健さんにほれている辰巳芸者に南田洋子さん。長門裕之さんとの絡みが素晴らしく巧みな演技。後のご夫婦だけに息がピッタリ(笑)。昔の女優さんの美しさは半端ないですね…。皆さん息を呑む美しさです。

ラストの趣向がまだ確立されてないので通常の殴り込みの形とは少し違うのですが、こちらも各人に見せ場が振り分けられていると考えられ、通常の形になれている僕には新鮮でしたね。相手を油断させる赤穂浪士的な所も含めて…。

萬屋錦之介の任侠ものはこれ一本という点も興味深いです。(健さんとは宮本武蔵で共演してますからその辺りも出演を了承した理由かな?)また健さんの歴史を鑑みるとこの作品は外せないてすね。こちらのシリーズも見ていきます(^^)
滝和也

滝和也