滝和也

うる星やつら3 リメンバー・マイラブの滝和也のレビュー・感想・評価

3.5
ダーリン、うちを
忘れないで…(T_T)

幸せな時間軸から
外れた世界は夢から
覚めた現実へ…
基本プロットである
追うラム、逃げるあたる
が逆となる劇場板第三弾

「うる星やつら リメンバー・マイ・ラブ」

そう言えば高校入学祝いに買ってもらったビデオデッキとセットでこのVHSソフトをもらいました…。最早見ること叶わずで今回初めて借りてきてます…。

友引メルヘンランドの開園日、あたる、ラムそして面倒たちは早速でかける。宇宙人やモンスターが一同に揃う華やかな園内でメガネ達四人は子供の頃の自分に出会い、面倒は死んだはずの初めて飼ったタコ、梅千代に出会う。竜之介は話すウサギに出会い、アリス姿の自分に出会う。その後ルウのマジックショーに入るラム、あたる達。マジシャン助手の女の子に誘われ舞台に出たあたるは箱の中で…ピンクのカバに変えられていた…。それは恐ろしい呪いの発動で…。

うる星やつらの売りは追うラム(美人)逃げるあたる(普通の男)という基本プロットが男の夢そのもの(笑)であるが…今回はその逆。※オンリー・ユーはプロットの超拡大版。美女ラムが消え、追うカバあたるという構造であり、本来危うさがあるはずだが、シリーズが長く続き、安定した故に使えた内容。それは君去りし後のようなあたるがラムのいない寂しさを出した回、つまり面白い回それが映画化されたパターン。

ただ…オンリー・ユー程の派手さがない…。盛り上がりにかける。それはこの作品のもう一つのギミックが派手さや盛り上がりを欠いてしまう結果をもたらしている。

物語中盤ラムはルウに囚われ、物語からほぼ退場。しかもラムを追う弁天、お雪、ランが途中でラムを追うのを諦めてしまい、退場。オンリー・ユーではここで諦めず、ラストへの盛り上がりに1役かう。退場はラムが消えたうる星ワールドは消えてしまい、時間軸すら動き出し、現実に囚われ…というギミックのためでこれはこれで仕方ないが…やはりラストのアクションでの盛り上がりにかけてしまった。突然出てきた地味なゲストキャラクターだけでは弱い。またあたるのラストの活躍の演出はビューティフルドリーマーに歯が立たない。赤い糸のあれは…良かったが…。

幸せな時間軸が消えるというメタフィクション的な発想も幸せ過ぎる時間がいつまでも続くというビューティフルドリーマーの逆であり、ラムがいなくなることでそのビューティフルドリーマー的な希望が消えるという発想に繋がる。その点では天才押井守がクビとなった後も影響が強く残っている…。

また序盤にあるカバとなるあたるに対してラムが見捨てないと抱きつくシーンはラブコメとして(男の願望・理想の女である)ラムの真骨頂として名シーン。ただ…これまた逆パターンがTVにはあり、ラムちゃん牛になるの回。あたるが、牛にかまれ牛になる…と思い込んだラムを抱きしめ、一生飼ってやると泣いて牛小屋を作るシーンの裏返し。

つまり、逆パターンからの発想が多く、考えうる範囲で、しかも地味なため、前作、前々作と比べると落ちる部分が残念ながら目立つ。押井守の影響下にありながら、作家性という新しさがない。ラムやあたるのライバル的なキャラもおらず、ゲストキャラが弱い…うる星やつらのゲストキャラはどれも強く印象があるがこの作品は…ルウにしても家庭教師のラーラも弱い。ラーラは島本・クラリス・須美様であるのだが…出演時間が短過ぎる。ラムを失ったあたるの描写が弱く、君さりし後のときのような感動が弱い。

うる星やつららしさがないとは言わないし、TVの延長線作品と考えれば普通というところだろうか。深く考えすぎて壊れた4作目よりは遥かに良いが。やはり押井守作品である前々作前作には中々…難しい。
滝和也

滝和也