滝和也

悪魔の手毬唄の滝和也のレビュー・感想・評価

悪魔の手毬唄(1977年製作の映画)
4.0
その恩讐と業の
深さゆえに…

終戦後の寒村を舞台に
繰り広げられる
連続殺人…
手毬唄に見立てられた
美女たちの最後に
金田一耕助の推理は如何に…

「悪魔の手毬唄」

日本が誇る横溝正史原作の本格ミステリー、石坂浩二主演、市川崑監督の金田一耕助シリーズの第二弾。ミステリー映画の金字塔として今でも名作として誉れ高い今作…。地方の寒村に根深く残る旧家の対立、おどろおどろしいまでの人間関係が業を深め、酷たらしい事件が始まります…。

金田一耕助はある男を鬼首村で待っていた。嘗て協力して事件を解決したその男、磯川警部は金田一に鬼首村で20年前起こった殺人事件の解決を依頼する。それは逗留した亀の湯の主人青池りかの夫が殺された事件だった。だが鬼首村の由良家の娘が失踪、死体で発見され…

横溝正史ならではの日本の古い旧家に起こる陰湿で不気味な雰囲気、青空が一度も見えない寒々しい画面が不気味さを助長する。引きのカットも多く、どこか空々しい画作りが怖い…。そして見立て殺人の狂気の美しさ…。

そんな冷たい雰囲気の中で1人、りかに心を寄せる磯川警部の温かみと純情。その可笑しみと哀しみを初老の男として演じた若山富三郎の名演が素晴らしい。またりかを演じたのは岸恵子さん。見事な演技、市川組常連のさすがの美しさ。草笛光子さん、仁科亜季子さん他女優陣が目立つ作品ですね。

兎に角、登場人物が爆裂多く、整理しないと迷宮に迷い込む。そのあたりが横溝正史の手であるが…。謎の男、恩田…そして予期せぬギミック。初見ではあまりの酷さとそのエネルギーにびっくり(笑)したものです。

犬神家も驚きましたが、個人的にはこちらが上かなと。でも金田一耕助は基本いつも間に合わないですからね…。悲しみと共に幕が下りますが…今作のラストの磯川警部とのやり取りは心に染みますね…。何回見ても良いものは良い…。石坂浩二さんの金田一耕助、久々に見ていきたくなりましたよ。
滝和也

滝和也